ディープラーニングによって特定された網膜血管に関する29項目のパラメーターを用いることで、脳卒中リスクの予測精度が向上するとする論文が、「Heart」に1月13日掲載された。非侵襲の眼底検査で得られる情報のみにもかかわらず、採血検査値を含む既知のリスク因子に基づく予測精度と同等以上のパフォーマンスを示すという。ロイヤル・ビクトリア眼科耳科病院(オーストラリア)のMayinuer Yusufu氏らの研究によるもの。眼底所見が脳卒中リスクと相関することは古くから知られている。しかし予測精度の不確実性のため、眼底検査は非侵襲かつ低コストであり、スクリーニングに適しているにもかかわらず、脳卒中予防にあまり役立てられていない。一方、人工知能を用いたディープラーニングにより、これまで着目されることのなかった眼底所見と脳卒中リスクとの関連が示されつつある。Yusufu氏は、そのようなディープラーニングのアルゴリズムの一つ(Retina-based Microvascular Health Assessment System;RMHAS)を用いて、脳卒中リスク評価における眼底所見のポテンシャルを再評価した。英国の一般住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」の参加者のうち、網膜画像データがあり、脳卒中、心疾患、末梢動脈疾患、がんの既往者、および追跡開始1年以内の脳卒中発症などを除外し、4万5,161人(平均年齢55.4±8.18歳、女性54.9%)を解析対象とした。中央値12.5年の追跡で、749件の脳卒中発症が記録されていた。RMHASにより、118項目の網膜血管パラメーターのうち、脳卒中リスクと有意に関連しているものとして29項目が抽出された。その過半数に当たる17項目は密度パラメーターであり、複雑性パラメーターが8項目、血管径パラメーターが3項目、屈曲蛇行パラメーターが1項目だった。密度パラメーターの1標準偏差(SD)の変化は、9.8~19.0%の脳卒中リスク上昇と関連していた。また血管径パラメーターについては1SD当たり10.1~14.1%、複雑性パラメーターや屈曲蛇行パラメーターは同10.4~19.5%の脳卒中リスク上昇と関連していた。ROC解析では、年齢、性別、BMI、喫煙、血圧・血清脂質・血糖マーカーなどの既知のリスク因子のみによる脳卒中発症予測能(AUC)は0.738であったが、これに網膜血管パラメーターを加えるとAUCは0.752となり、有意に上昇した(P<0.001)。また、既知のリスク因子の中で、問診・検査を要さない年齢と性別という2項目に網膜血管パラメーターを加えるのみでもAUC0.739と、非有意ながら既知のリスク因子による予測能を上回った。著者らは、「われわれの研究結果は、網膜血管パラメーターを包括的に評価することで、脳卒中発症予測能を向上させ得ることを示している。この手法は、脳卒中ハイリスク集団を対象とする非侵襲的なスクリーニング法として応用できるのではないか」と述べている。(HealthDay News 2025年1月16日)https://www.healthday.com/healthpro-news/cardiovascular-diseases/twenty-nine-novel-retinal-vascular-parameters-linked-to-stroke-riskCopyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
ディープラーニングによって特定された網膜血管に関する29項目のパラメーターを用いることで、脳卒中リスクの予測精度が向上するとする論文が、「Heart」に1月13日掲載された。非侵襲の眼底検査で得られる情報のみにもかかわらず、採血検査値を含む既知のリスク因子に基づく予測精度と同等以上のパフォーマンスを示すという。ロイヤル・ビクトリア眼科耳科病院(オーストラリア)のMayinuer Yusufu氏らの研究によるもの。眼底所見が脳卒中リスクと相関することは古くから知られている。しかし予測精度の不確実性のため、眼底検査は非侵襲かつ低コストであり、スクリーニングに適しているにもかかわらず、脳卒中予防にあまり役立てられていない。一方、人工知能を用いたディープラーニングにより、これまで着目されることのなかった眼底所見と脳卒中リスクとの関連が示されつつある。Yusufu氏は、そのようなディープラーニングのアルゴリズムの一つ(Retina-based Microvascular Health Assessment System;RMHAS)を用いて、脳卒中リスク評価における眼底所見のポテンシャルを再評価した。英国の一般住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」の参加者のうち、網膜画像データがあり、脳卒中、心疾患、末梢動脈疾患、がんの既往者、および追跡開始1年以内の脳卒中発症などを除外し、4万5,161人(平均年齢55.4±8.18歳、女性54.9%)を解析対象とした。中央値12.5年の追跡で、749件の脳卒中発症が記録されていた。RMHASにより、118項目の網膜血管パラメーターのうち、脳卒中リスクと有意に関連しているものとして29項目が抽出された。その過半数に当たる17項目は密度パラメーターであり、複雑性パラメーターが8項目、血管径パラメーターが3項目、屈曲蛇行パラメーターが1項目だった。密度パラメーターの1標準偏差(SD)の変化は、9.8~19.0%の脳卒中リスク上昇と関連していた。また血管径パラメーターについては1SD当たり10.1~14.1%、複雑性パラメーターや屈曲蛇行パラメーターは同10.4~19.5%の脳卒中リスク上昇と関連していた。ROC解析では、年齢、性別、BMI、喫煙、血圧・血清脂質・血糖マーカーなどの既知のリスク因子のみによる脳卒中発症予測能(AUC)は0.738であったが、これに網膜血管パラメーターを加えるとAUCは0.752となり、有意に上昇した(P<0.001)。また、既知のリスク因子の中で、問診・検査を要さない年齢と性別という2項目に網膜血管パラメーターを加えるのみでもAUC0.739と、非有意ながら既知のリスク因子による予測能を上回った。著者らは、「われわれの研究結果は、網膜血管パラメーターを包括的に評価することで、脳卒中発症予測能を向上させ得ることを示している。この手法は、脳卒中ハイリスク集団を対象とする非侵襲的なスクリーニング法として応用できるのではないか」と述べている。(HealthDay News 2025年1月16日)https://www.healthday.com/healthpro-news/cardiovascular-diseases/twenty-nine-novel-retinal-vascular-parameters-linked-to-stroke-riskCopyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock