てんかんに神経・精神疾患が併存しやすいことが知られているが、リスクの程度やメカニズムという点で不明点が残されている。青島大学(中国)および青島市市立医院のDan-Dan Zhang氏らは、英国で行われている一般住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータを縦断的に解析し、これらの点を検討した。UKバイオバンク参加者のうち、ベースライン時点でてんかん以外の神経・精神疾患を有していた患者、17年間の追跡期間中にてんかんを発症した患者、データ欠落者などを除外し、42万6,527人(平均年齢56.52±8.12歳、男性46.41%)を解析対象とした。このうち3,251人(0.76%)がベースライン時点でてんかんを有していた。交絡因子(年齢、性別、民族、学歴〔脳卒中については血圧〕)を調整したCox回帰モデルによる検討の結果、対象群と比較してんかん群の神経・精神疾患の発症ハザード比(95%信頼区間)は以下のように、有意に高いことが示された。統合失調症7.43(4.05~13.64)、認知症2.90(2.45~3.42)、パーキンソン病2.11(1.55~2.86)、脳卒中2.02(1.75~2.33)、睡眠障害1.91(1.59~2.29)、大うつ病性障害1.89(1.66~2.16)、不安症1.78(1.56~2.04)。性別ごとの解析でも、女性のパーキンソン病のリスクが非有意であることを除いて全て有意だった。続いて、多重線形モデルを用いて、年齢、性別、民族、BMI、喫煙・飲酒習慣、学歴、社会経済的地位を調整後に、脳機能関連指標との関係を検討。すると、てんかんを有することは、認知機能や運動機能(握力や歩行速度)、心理的健康(不安やうつレベル、主観的幸福感など)を表す多くの指標の低下と有意に関連していた。このほか画像データの解析からは、てんかんに関連する脳領域として、大脳皮質(特に上頭頂小葉、楔前部、外側後頭葉、中心前回)、淡蒼球、海馬などが特定された。また、媒介分析により、γ-GTやHDL、ACE2、GDF15(growth differentiation factor 15)などの媒介効果が示され、てんかん患者の神経・精神疾患や脳機能低下のリスクに、肝機能と脂質代謝が関与している可能性が浮かび上がった。Zhang氏らは、「われわれの研究結果は、てんかんへの早期介入が患者の脳の健康にとって重要であることを意味している。てんかんの負の側面の克服と、より質の高い生活の実現に向けた、新たな知見と言える」と述べている。(HealthDay News 2025年1月10日)https://www.healthday.com/healthpro-news/neurology/epilepsy-associated-with-poor-brain-healthCopyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock