思春期の近視において、多焦点ソフトコンタクトレンズ(MFSCL)による治療の中断後にもリバウンドは生じないとする論文が、「JAMA Ophthalmology」に1月16日掲載された。米ヒューストン大学のDavid A. Berntsen氏らが、小児のMFSCL使用に関するコホート研究「Bifocal Lenses in Nearsighted Kids(BLINK)Study」の継続研究である「BLINK2」のデータを解析し明らかにした。BLINKでは、MFSCLにより小児の等価球面度数(SE)が増大し、眼軸長の延長が抑制されるというエビデンスが得られていた。ただし、MFSCLの使用を中断した場合に、リバウンド(近視を有する当該年齢の小児で予測される変化を超える屈折異常の進行)が生じる懸念が、従来指摘されていた。そこで、BLINKに続いてBLINK2が企画され、検証が行われた。BLINK2は2019年9月~2021年1月に、BLINKに参加した小児248人が登録され、2024年1月まで追跡された。BLINKでは、高加入度(+2.50D)MFSCL、中加入度(+1.50D)MFSCL、および単焦点ソフトコンタクトレンズ(SVSCL)の3群が設定されていたが、BLINK2では全員に対して、最初の2年間は高加入度MFSCLを用い、3年目はSVSCLを使用するという同じ治療を行った。追跡調査を完了した235人のベースライン時(BLINK2開始時)の主な特徴は、年齢が中央値15歳(範囲11~17)、女子59%、眼軸長25.2±0.9mm、SE-3.40±1.40Dだった。BLINK2期間中に、眼軸長は年平均0.03mm(95%信頼区間0.01~0.05)延長していて、BLINKの割り付けによる有意な差は認められなかった(P=0.81)。また、SEの変化は年平均-0.17D(同-0.22~-0.12)で、こちらもBLINKの割り付けによる有意差はなかった(P=0.57)。つまり、MFSCLで抑制されていた屈折異常の進行が、MFSCL中止後にリバウンドするという現象は認められなかった。その一方、BLINK2期間全体を通じて、BLINKにおける高加入度MFSCL群は、中加入度MFSCL群やSVSCL群に比較し、眼軸長が短く屈折異常が抑制されているという差が維持されていた。つまり、BLINK2スタート時点に高加入度MFSCLへ切り替えても、それ以前に生じていた屈折異常の進行の差をキャッチアップできていなかった。この結果に基づき著者らは、「10代後半の近視に対してMFSCLによる治療を中断しても、その治療効果が失われることはなく、眼軸長の延長と近視の進行は年齢相応の速度であった。これは、未成年期においては近視の進行が止まるまで、MFSCLの使用を継続することを支持するものと言える」と総括している。なお、数人の著者が、眼科関連企業との利益相反(COI)に関する情報を開示している。(HealthDay News 2025年1月21日)https://www.healthday.com/healthpro-news/eye-care/discontinuing-multifocal-contacts-does-not-diminish-treatment-effect-in-myopiaCopyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
思春期の近視において、多焦点ソフトコンタクトレンズ(MFSCL)による治療の中断後にもリバウンドは生じないとする論文が、「JAMA Ophthalmology」に1月16日掲載された。米ヒューストン大学のDavid A. Berntsen氏らが、小児のMFSCL使用に関するコホート研究「Bifocal Lenses in Nearsighted Kids(BLINK)Study」の継続研究である「BLINK2」のデータを解析し明らかにした。BLINKでは、MFSCLにより小児の等価球面度数(SE)が増大し、眼軸長の延長が抑制されるというエビデンスが得られていた。ただし、MFSCLの使用を中断した場合に、リバウンド(近視を有する当該年齢の小児で予測される変化を超える屈折異常の進行)が生じる懸念が、従来指摘されていた。そこで、BLINKに続いてBLINK2が企画され、検証が行われた。BLINK2は2019年9月~2021年1月に、BLINKに参加した小児248人が登録され、2024年1月まで追跡された。BLINKでは、高加入度(+2.50D)MFSCL、中加入度(+1.50D)MFSCL、および単焦点ソフトコンタクトレンズ(SVSCL)の3群が設定されていたが、BLINK2では全員に対して、最初の2年間は高加入度MFSCLを用い、3年目はSVSCLを使用するという同じ治療を行った。追跡調査を完了した235人のベースライン時(BLINK2開始時)の主な特徴は、年齢が中央値15歳(範囲11~17)、女子59%、眼軸長25.2±0.9mm、SE-3.40±1.40Dだった。BLINK2期間中に、眼軸長は年平均0.03mm(95%信頼区間0.01~0.05)延長していて、BLINKの割り付けによる有意な差は認められなかった(P=0.81)。また、SEの変化は年平均-0.17D(同-0.22~-0.12)で、こちらもBLINKの割り付けによる有意差はなかった(P=0.57)。つまり、MFSCLで抑制されていた屈折異常の進行が、MFSCL中止後にリバウンドするという現象は認められなかった。その一方、BLINK2期間全体を通じて、BLINKにおける高加入度MFSCL群は、中加入度MFSCL群やSVSCL群に比較し、眼軸長が短く屈折異常が抑制されているという差が維持されていた。つまり、BLINK2スタート時点に高加入度MFSCLへ切り替えても、それ以前に生じていた屈折異常の進行の差をキャッチアップできていなかった。この結果に基づき著者らは、「10代後半の近視に対してMFSCLによる治療を中断しても、その治療効果が失われることはなく、眼軸長の延長と近視の進行は年齢相応の速度であった。これは、未成年期においては近視の進行が止まるまで、MFSCLの使用を継続することを支持するものと言える」と総括している。なお、数人の著者が、眼科関連企業との利益相反(COI)に関する情報を開示している。(HealthDay News 2025年1月21日)https://www.healthday.com/healthpro-news/eye-care/discontinuing-multifocal-contacts-does-not-diminish-treatment-effect-in-myopiaCopyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock