アトピー性皮膚炎(AD)の児では、転校などのストレスの多い生活上の出来事(ライフイベント)がAD症状悪化のリスクと関連しているとする研究結果が、「Journal of Investigative Dermatology」に1月28日掲載された論文で明らかにされた。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のKatrina Abuabara氏らは、エイボン親子縦断研究(ALSPAC)のデータ(1990〜2000年)を用いた縦断的コホート研究を実施し、幼少期におけるストレスの多いライフイベントがADとその症状の程度に及ぼす影響を評価した。対象はALSPAC参加女性の児1万3,972人とし、出生から中央値で81カ月(四分位範囲42〜103カ月)にわたり追跡した。18、30、42、57、69、81、103カ月の7時点で主な養育者(大部分が母親)に質問し、これら7時点あるいはそれ以前に、屈曲部(肘や膝などの屈側)に皮膚炎が2回以上認められた場合、ADであると見なした。ADの症状の程度についても、これら7時点で、過去1年間に「ADはあるが問題なし」「軽度」「中等度」「重度」のどれに相当したかを質問した。また、これら7時点で、各年齢に応じた15~17個のライフイベントを挙げ、過去1年間にそれが児に発生したか、またそれが児にどれほどのストレスとなったかを、0(発生なし)、1(動揺なし)、2(やや動揺)、3(相当動揺)、4(大変動揺)で評価させた(SLEスコア)。さらに、各時点以前のスコアを合計して累積SLEスコアとした。ADを有していたのは4,454人(31.9%)であった。ストレスの多いライフイベントとして多かったのは、学校への入学(91%)、転校(75%)、ペットの死(54%)、引越し(54%)、弟/妹の誕生(45%)であった。多変量混合モデルにより、児の年齢、性別、妊娠中の母親のストレス、社会経済的背景指数を調整した結果、単一時点において(つまり横断的に見て)、SLEスコアが1標準偏差増加するごとに、AD(問題なしから重症までを含む)のリスクは上昇し(オッズ比〔OR〕1.04、95%信頼区間〔CI〕1.01〜1.07)、特に重度となるORは1.13と高かった(95%CI 1.03〜1.23)。次に、累積SLEスコアの影響について検討したところ、累積SLEスコアが1標準偏差増加した場合のADのORは1.11(95%CI 1.07〜1.16)となって、単一時点のSLEスコアとADの関連よりも大きくなり、重度となるORも1.17(95%CI 1.05〜1.31)と高くなっていた。個々のライフイベントとADとの関連を評価したところ、転校(OR 1.06、95%CI 1.02〜1.09)、衝撃的または恐ろしい出来事の経験(同1.04、1.00〜1.07)、弟/妹の誕生(同1.06、1.01〜1.12)、親友の喪失(同1.09、1.04〜1.16)、養育者の変更(同1.07、1.00〜1.15)が、ADリスクの増加とそれぞれ独立した関連を示した。入学はリスクの減少を示した(同0.93、0.88~0.98)。これとは別に、親と引き離される、虐待を受けるなど、深刻さの程度が高いライフイベントを5つ選んでADとの関連を見たところ、累積SLEスコアの分析ではADのリスクは有意に増加していたが(同1.05、1.01~1.09)、単一時点における分析では関連が有意ではなかった(同1.02、0.99~1.05)。著者らは、「今回の結果を見ると、親や医療従事者がライフイベントを契機としてADが再燃する可能性を予期し、再燃が起きる前に保湿や治療を行うことで、これを回避できるのではないか。ストレス低減法のいくつかはADの症状を改善し得るとされており、これらはストレスの多いライフイベントを経験する患者に使えると考える」と述べている。なお、1人の著者が、製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2025年2月5日)https://www.healthday.com/healthpro-news/skin-health/early-childhood-stressful-life-events-linked-to-increased-eczema-activityCopyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
アトピー性皮膚炎(AD)の児では、転校などのストレスの多い生活上の出来事(ライフイベント)がAD症状悪化のリスクと関連しているとする研究結果が、「Journal of Investigative Dermatology」に1月28日掲載された論文で明らかにされた。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のKatrina Abuabara氏らは、エイボン親子縦断研究(ALSPAC)のデータ(1990〜2000年)を用いた縦断的コホート研究を実施し、幼少期におけるストレスの多いライフイベントがADとその症状の程度に及ぼす影響を評価した。対象はALSPAC参加女性の児1万3,972人とし、出生から中央値で81カ月(四分位範囲42〜103カ月)にわたり追跡した。18、30、42、57、69、81、103カ月の7時点で主な養育者(大部分が母親)に質問し、これら7時点あるいはそれ以前に、屈曲部(肘や膝などの屈側)に皮膚炎が2回以上認められた場合、ADであると見なした。ADの症状の程度についても、これら7時点で、過去1年間に「ADはあるが問題なし」「軽度」「中等度」「重度」のどれに相当したかを質問した。また、これら7時点で、各年齢に応じた15~17個のライフイベントを挙げ、過去1年間にそれが児に発生したか、またそれが児にどれほどのストレスとなったかを、0(発生なし)、1(動揺なし)、2(やや動揺)、3(相当動揺)、4(大変動揺)で評価させた(SLEスコア)。さらに、各時点以前のスコアを合計して累積SLEスコアとした。ADを有していたのは4,454人(31.9%)であった。ストレスの多いライフイベントとして多かったのは、学校への入学(91%)、転校(75%)、ペットの死(54%)、引越し(54%)、弟/妹の誕生(45%)であった。多変量混合モデルにより、児の年齢、性別、妊娠中の母親のストレス、社会経済的背景指数を調整した結果、単一時点において(つまり横断的に見て)、SLEスコアが1標準偏差増加するごとに、AD(問題なしから重症までを含む)のリスクは上昇し(オッズ比〔OR〕1.04、95%信頼区間〔CI〕1.01〜1.07)、特に重度となるORは1.13と高かった(95%CI 1.03〜1.23)。次に、累積SLEスコアの影響について検討したところ、累積SLEスコアが1標準偏差増加した場合のADのORは1.11(95%CI 1.07〜1.16)となって、単一時点のSLEスコアとADの関連よりも大きくなり、重度となるORも1.17(95%CI 1.05〜1.31)と高くなっていた。個々のライフイベントとADとの関連を評価したところ、転校(OR 1.06、95%CI 1.02〜1.09)、衝撃的または恐ろしい出来事の経験(同1.04、1.00〜1.07)、弟/妹の誕生(同1.06、1.01〜1.12)、親友の喪失(同1.09、1.04〜1.16)、養育者の変更(同1.07、1.00〜1.15)が、ADリスクの増加とそれぞれ独立した関連を示した。入学はリスクの減少を示した(同0.93、0.88~0.98)。これとは別に、親と引き離される、虐待を受けるなど、深刻さの程度が高いライフイベントを5つ選んでADとの関連を見たところ、累積SLEスコアの分析ではADのリスクは有意に増加していたが(同1.05、1.01~1.09)、単一時点における分析では関連が有意ではなかった(同1.02、0.99~1.05)。著者らは、「今回の結果を見ると、親や医療従事者がライフイベントを契機としてADが再燃する可能性を予期し、再燃が起きる前に保湿や治療を行うことで、これを回避できるのではないか。ストレス低減法のいくつかはADの症状を改善し得るとされており、これらはストレスの多いライフイベントを経験する患者に使えると考える」と述べている。なお、1人の著者が、製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2025年2月5日)https://www.healthday.com/healthpro-news/skin-health/early-childhood-stressful-life-events-linked-to-increased-eczema-activityCopyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock