経頭蓋直流電気刺激(tDCS)は、長期入院中の慢性統合失調症患者における遅発性ジスキネジア(TD)の、特に顔面および口腔の運動障害を効果的かつ安全に改善する治療法である可能性のあることが、「Clinical Neurophysiology」10月号に掲載された論文で明らかにされた。揚州大学教育病院(中国)のXiaoli Lyu氏らは、統合失調症とTDの診断基準を満たす長期入院患者64人を対象に、シャム対照二重盲検ランダム化比較試験を実施し、tDCSの有効性と安全性を評価した。対象者は、tDCSを受ける群(35人、治療群)とシャム刺激を受ける群(29人、対照群)にランダムに割り付けられた。tDCS群は、2mAの陽極を左背外側前頭前皮質に、陰極を右眼窩上部に配置したtDCS治療を15回(各回30分間、月曜日から金曜日まで1日1回、隔週にわたって実施)、受けた。主要評価項目は、異常不随意運動評価尺度(Abnormal Involuntary Movements Scale;AIMS)を用いて評価したTDの症状の重症度とした。AIMSはベースライン時、および3・5・7週間後に測定した。副次的評価項目として、陽性・陰性症状評価尺度(Positive and Negative Syndrome Scale;PANSS)および陰性症状評価尺度(Scale for the Assessment of Negative Symptoms;SANS)による評価が行われた。tDCSの副作用については、試験実施者がチクチク感、掻痒感、灼熱感、疼痛、疲労などについて「開かれた質問」を全期間にわたって行った。試験を完了したのは治療群28人、対照群24人であった。反復測定分散分析(RMANOVA)の結果、治療群と対照群のベースライン時のAIMS総スコアに有意差はなかったが、3週間後(P=0.048)、5週間後(P=0.002)、および7週間後(P=0.015)には、治療群でスコアが有意に低下したことが示された。また、AIMSのサブスコアである顔面および口腔の異常運動スコアについても、ベースライン時には両群間に有意差はなかったが、3週間後(P=0.025)、5週間後(P=0.001)、および7週間後(P=0.005)には、治療群では対照群に比べてスコアが有意に低下していた。治療終了時(5週目)にAIMS総スコアが30%以上改善していた者の割合は、治療群で50%(14/28人)、対照群で8.3%(2/24人)であった(P=0.001)。PANSSおよびSANSのスコアについては、有意差は認められなかった。副作用のうち、チクチク感については、両群間で有意差が認められた(P=0.029)。著者らは、「われわれの研究結果が、TDを合併した慢性統合失調症患者の治療に対する新たなアプローチとなることを期待する」と述べている。(HealthDay News 2024年11月18日)https://www.healthday.com/healthpro-news/mental-health/transcranial-direct-current-stimulation-safe-effective-for-tardive-dyskinesiaCopyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
経頭蓋直流電気刺激(tDCS)は、長期入院中の慢性統合失調症患者における遅発性ジスキネジア(TD)の、特に顔面および口腔の運動障害を効果的かつ安全に改善する治療法である可能性のあることが、「Clinical Neurophysiology」10月号に掲載された論文で明らかにされた。揚州大学教育病院(中国)のXiaoli Lyu氏らは、統合失調症とTDの診断基準を満たす長期入院患者64人を対象に、シャム対照二重盲検ランダム化比較試験を実施し、tDCSの有効性と安全性を評価した。対象者は、tDCSを受ける群(35人、治療群)とシャム刺激を受ける群(29人、対照群)にランダムに割り付けられた。tDCS群は、2mAの陽極を左背外側前頭前皮質に、陰極を右眼窩上部に配置したtDCS治療を15回(各回30分間、月曜日から金曜日まで1日1回、隔週にわたって実施)、受けた。主要評価項目は、異常不随意運動評価尺度(Abnormal Involuntary Movements Scale;AIMS)を用いて評価したTDの症状の重症度とした。AIMSはベースライン時、および3・5・7週間後に測定した。副次的評価項目として、陽性・陰性症状評価尺度(Positive and Negative Syndrome Scale;PANSS)および陰性症状評価尺度(Scale for the Assessment of Negative Symptoms;SANS)による評価が行われた。tDCSの副作用については、試験実施者がチクチク感、掻痒感、灼熱感、疼痛、疲労などについて「開かれた質問」を全期間にわたって行った。試験を完了したのは治療群28人、対照群24人であった。反復測定分散分析(RMANOVA)の結果、治療群と対照群のベースライン時のAIMS総スコアに有意差はなかったが、3週間後(P=0.048)、5週間後(P=0.002)、および7週間後(P=0.015)には、治療群でスコアが有意に低下したことが示された。また、AIMSのサブスコアである顔面および口腔の異常運動スコアについても、ベースライン時には両群間に有意差はなかったが、3週間後(P=0.025)、5週間後(P=0.001)、および7週間後(P=0.005)には、治療群では対照群に比べてスコアが有意に低下していた。治療終了時(5週目)にAIMS総スコアが30%以上改善していた者の割合は、治療群で50%(14/28人)、対照群で8.3%(2/24人)であった(P=0.001)。PANSSおよびSANSのスコアについては、有意差は認められなかった。副作用のうち、チクチク感については、両群間で有意差が認められた(P=0.029)。著者らは、「われわれの研究結果が、TDを合併した慢性統合失調症患者の治療に対する新たなアプローチとなることを期待する」と述べている。(HealthDay News 2024年11月18日)https://www.healthday.com/healthpro-news/mental-health/transcranial-direct-current-stimulation-safe-effective-for-tardive-dyskinesiaCopyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock