高齢者がふだん行っている運動の強度と、急速な腎機能低下のリスクとの間に、負の用量反応関係が存在することを示唆する研究結果が報告された。ノルウェー科学技術大学のStein I. Hallan氏らが、運動による高齢者の心血管リスク抑制効果を検証した、同国での非盲検ランダム化並行群間比較試験「Generation 100 Study」のデータを事後解析したもので、詳細は「Journal of the American Society of Nephrology」に2月11日掲載された。運動の腎保護作用に関するエビデンスが増えているが、運動強度が腎機能の変化と相関するのか否かはよく分かっていない。また腎機能低下を来しやすい高齢者では、筋肉量減少のため、臨床で広く用いられているクレアチニンに基づく推定糸球体濾過量(eGFR)は高値となりやすく、腎機能の正確な評価に適さない。これらを背景としてHallan氏らは、高齢者を対象として、筋肉量の影響を受けないシスタチンCに基づくeGFRの変化と、日常的な運動の強度との関連を検討した。認知症、管理不良な高血圧や心血管疾患、運動を妨げる状態、データ欠落などを除外した、70~77歳の一般住民1,156人(年齢中央値72歳、eGFR中央値95mL/分/1.73m2)を解析対象とした。参加者はランダムに、(1)運動の推奨事項に関する情報を伝えるのみの対照群(385人)、(2)最大心拍数の70%の強度で50分間のトレーニング(moderate-intensity continuous training;MICT)を週2回行うMICT群(380人)、(3)MICTと同等の消費エネルギー量ながら、最大心拍数の90%の強度で4分×4回を含む高強度インターバルトレーニング(high-intensity interval training;HIIT)を週2回行うHIIT群(391人)の3群に割り付けられた。5年間の介入期間中に観察された酸素摂取量のピーク値(VO2peak)の上昇は、対照群1.8mL/kg/分、MICT群2.3mL/kg/分、HIIT群3.3mL/kg/分だった。一方、主要評価項目である急速な腎機能低下(eGFR低下速度が-5mL/分/1.73m2/年超で定義)は、対照群30%、MICT群28%、HIIT群23%に認められた。年齢、性別、ベースラインのVO2peak、eGFRを調整後、対照群を基準とする急速な腎機能低下の相対リスク(RR)は、MICT群0.93(95%信頼区間0.75~1.16)、HIIT群0.75(同0.59~0.95)であり、運動強度が高い方が低リスクという有意な用量反応関係が観察された(傾向性P=0.02)。介入の割り付けを考慮しない解析では、介入期間中に中~高強度の運動(MVPA)が週当たり20分超増加していた高齢者は、その時間が変化していなかった高齢者に比較し、急速な腎機能低下リスクが有意に低かった(RR0.73〔同0.53~0.99〕)。反対に、介入期間中にMVPAが週当たり20分超減少していた高齢者は、急速な腎機能低下リスクが高い傾向が見られた(RR1.30〔同0.93~1.83〕)。著者らは、「HIIT介入は高齢者の急速な腎機能低下リスクを有意に抑制した。HIITがもたらす数多くの健康上のメリットの一つとして、腎機能の維持効果も認識すべきだろう」と述べている。なお、2人の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2025年2月25日)https://www.healthday.com/healthpro-news/kidney-health/physical-activity-shows-dose-response-relationship-to-kidney-function-decline-in-older-adultsCopyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
高齢者がふだん行っている運動の強度と、急速な腎機能低下のリスクとの間に、負の用量反応関係が存在することを示唆する研究結果が報告された。ノルウェー科学技術大学のStein I. Hallan氏らが、運動による高齢者の心血管リスク抑制効果を検証した、同国での非盲検ランダム化並行群間比較試験「Generation 100 Study」のデータを事後解析したもので、詳細は「Journal of the American Society of Nephrology」に2月11日掲載された。運動の腎保護作用に関するエビデンスが増えているが、運動強度が腎機能の変化と相関するのか否かはよく分かっていない。また腎機能低下を来しやすい高齢者では、筋肉量減少のため、臨床で広く用いられているクレアチニンに基づく推定糸球体濾過量(eGFR)は高値となりやすく、腎機能の正確な評価に適さない。これらを背景としてHallan氏らは、高齢者を対象として、筋肉量の影響を受けないシスタチンCに基づくeGFRの変化と、日常的な運動の強度との関連を検討した。認知症、管理不良な高血圧や心血管疾患、運動を妨げる状態、データ欠落などを除外した、70~77歳の一般住民1,156人(年齢中央値72歳、eGFR中央値95mL/分/1.73m2)を解析対象とした。参加者はランダムに、(1)運動の推奨事項に関する情報を伝えるのみの対照群(385人)、(2)最大心拍数の70%の強度で50分間のトレーニング(moderate-intensity continuous training;MICT)を週2回行うMICT群(380人)、(3)MICTと同等の消費エネルギー量ながら、最大心拍数の90%の強度で4分×4回を含む高強度インターバルトレーニング(high-intensity interval training;HIIT)を週2回行うHIIT群(391人)の3群に割り付けられた。5年間の介入期間中に観察された酸素摂取量のピーク値(VO2peak)の上昇は、対照群1.8mL/kg/分、MICT群2.3mL/kg/分、HIIT群3.3mL/kg/分だった。一方、主要評価項目である急速な腎機能低下(eGFR低下速度が-5mL/分/1.73m2/年超で定義)は、対照群30%、MICT群28%、HIIT群23%に認められた。年齢、性別、ベースラインのVO2peak、eGFRを調整後、対照群を基準とする急速な腎機能低下の相対リスク(RR)は、MICT群0.93(95%信頼区間0.75~1.16)、HIIT群0.75(同0.59~0.95)であり、運動強度が高い方が低リスクという有意な用量反応関係が観察された(傾向性P=0.02)。介入の割り付けを考慮しない解析では、介入期間中に中~高強度の運動(MVPA)が週当たり20分超増加していた高齢者は、その時間が変化していなかった高齢者に比較し、急速な腎機能低下リスクが有意に低かった(RR0.73〔同0.53~0.99〕)。反対に、介入期間中にMVPAが週当たり20分超減少していた高齢者は、急速な腎機能低下リスクが高い傾向が見られた(RR1.30〔同0.93~1.83〕)。著者らは、「HIIT介入は高齢者の急速な腎機能低下リスクを有意に抑制した。HIITがもたらす数多くの健康上のメリットの一つとして、腎機能の維持効果も認識すべきだろう」と述べている。なお、2人の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2025年2月25日)https://www.healthday.com/healthpro-news/kidney-health/physical-activity-shows-dose-response-relationship-to-kidney-function-decline-in-older-adultsCopyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock