てんかん患者は骨密度が低く骨折リスクが高いことや、一部の抗てんかん発作薬(ASM)が骨密度を低下させることが報告されている。しかし、てんかん患者の胎児の骨への影響は明らかでない。浙江大学(中国)のHuali Luo氏らは、この点について、同大学関連病院のデータを用いた遡及的な解析を実施。結果の詳細が「Annals of Clinical and Translational Neurology」に2月3日掲載された。解析対象は、2012~2021年に妊娠前健康管理を受けていた、てんかんを有する18~45歳の単胎妊娠の妊婦83人と、年齢や妊娠週数などの因子が一致するように抽出した非てんかん妊婦249人。両群ともに、胎児の成長に影響を来し得るてんかん以外の既往がある妊婦は除外されている。児の骨の成長は、妊娠後期(28週以降)の超音波検査による大腿骨長と大横径で評価した。てんかん群の妊婦は教育歴が短く妊娠中断歴が少なかったが、年齢、妊娠中の喫煙・飲酒、妊娠前・分娩前のBMI、糖尿病・高血圧の既往には有意差がなかった。てんかん群の妊娠中のASM服用状況は、68人(82%)が服用、7人が非服用、8人は不明。妊娠中にASMを服用していた68人のうち41人(60%)は単剤、22人(32%)は2剤以上を服用し、5人(7%)は妊娠中に自発的に服用を中止していた。分娩方法については、帝王切開の割合がてんかん群で有意に高かった(55.4対37.3%〔P=0.004〕)。アプガースコアや出生時体重は有意差がなかった。母親の年齢、身長、体重、妊娠週数を調整後、胎児の大腿骨長は、てんかん群が6.812±0.025cm、対照群が6.923±0.014cmであり、前者が有意に短かった(P<0.0001)。大横径は有意差がなかった(P=0.811)。妊娠中のASM服用状況に基づき、非服用、単剤服用、2剤以上服用(多剤併用)という3群に分類し比較すると、大腿骨長および大横径ともに、非服用群と単剤服用群では有意差がない一方、多剤併用群は非服用群および単剤服用群より有意に低値だった(いずれもP<0.0001)。また出生体重は非服用群に比し多剤併用群は有意に低値であり(P<0.05)、非服用群と単剤服用群、および、単剤服用群と多剤併用群との差は非有意だった。Luo氏は、「妊娠中にASMを単剤のみ服用することは、てんかんを有する妊婦とその児にとって最適な選択ではないだろうか。妊娠中の発作を抑制しつつ、ASMが児の成長に及ぼす影響を最小化できるからだ」と述べている。(HealthDay News 2025年2月14日)https://www.healthday.com/healthpro-news/neurology/offspring-of-women-with-epilepsy-experience-decreased-bone-metabolismCopyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
てんかん患者は骨密度が低く骨折リスクが高いことや、一部の抗てんかん発作薬(ASM)が骨密度を低下させることが報告されている。しかし、てんかん患者の胎児の骨への影響は明らかでない。浙江大学(中国)のHuali Luo氏らは、この点について、同大学関連病院のデータを用いた遡及的な解析を実施。結果の詳細が「Annals of Clinical and Translational Neurology」に2月3日掲載された。解析対象は、2012~2021年に妊娠前健康管理を受けていた、てんかんを有する18~45歳の単胎妊娠の妊婦83人と、年齢や妊娠週数などの因子が一致するように抽出した非てんかん妊婦249人。両群ともに、胎児の成長に影響を来し得るてんかん以外の既往がある妊婦は除外されている。児の骨の成長は、妊娠後期(28週以降)の超音波検査による大腿骨長と大横径で評価した。てんかん群の妊婦は教育歴が短く妊娠中断歴が少なかったが、年齢、妊娠中の喫煙・飲酒、妊娠前・分娩前のBMI、糖尿病・高血圧の既往には有意差がなかった。てんかん群の妊娠中のASM服用状況は、68人(82%)が服用、7人が非服用、8人は不明。妊娠中にASMを服用していた68人のうち41人(60%)は単剤、22人(32%)は2剤以上を服用し、5人(7%)は妊娠中に自発的に服用を中止していた。分娩方法については、帝王切開の割合がてんかん群で有意に高かった(55.4対37.3%〔P=0.004〕)。アプガースコアや出生時体重は有意差がなかった。母親の年齢、身長、体重、妊娠週数を調整後、胎児の大腿骨長は、てんかん群が6.812±0.025cm、対照群が6.923±0.014cmであり、前者が有意に短かった(P<0.0001)。大横径は有意差がなかった(P=0.811)。妊娠中のASM服用状況に基づき、非服用、単剤服用、2剤以上服用(多剤併用)という3群に分類し比較すると、大腿骨長および大横径ともに、非服用群と単剤服用群では有意差がない一方、多剤併用群は非服用群および単剤服用群より有意に低値だった(いずれもP<0.0001)。また出生体重は非服用群に比し多剤併用群は有意に低値であり(P<0.05)、非服用群と単剤服用群、および、単剤服用群と多剤併用群との差は非有意だった。Luo氏は、「妊娠中にASMを単剤のみ服用することは、てんかんを有する妊婦とその児にとって最適な選択ではないだろうか。妊娠中の発作を抑制しつつ、ASMが児の成長に及ぼす影響を最小化できるからだ」と述べている。(HealthDay News 2025年2月14日)https://www.healthday.com/healthpro-news/neurology/offspring-of-women-with-epilepsy-experience-decreased-bone-metabolismCopyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock