子どもの乱視の有病率や重症度が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックを挟み有意に上昇している実態が報告された。香港中文大学(中国)のKa Wai Kam氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Ophthalmology」に3月20日掲載された。COVID-19パンデミック中に、小児の近視が増加したことが報告されているが、乱視の有病率の変化は検討されていない。Kam氏らは、香港の全小学校から層別サンプリングされた生徒を対象に実施されている眼科検診受診児童のうち、調節麻痺下での屈折検査と角膜形状測定のデータがあり、先天性眼疾患および眼外傷や眼科手術の既往のない6~8歳児、2万1,655人(平均年齢7.31±0.90歳、男児52.9%)のデータを用い、この点を検討した。解析対象期間は、2015~2023年だった。円柱度数が1.0D以上の場合を屈折性乱視(refractive astigmatism;RA)と定義すると、その有病率は2015年の21.4%から、2022~2023年には34.7%に上昇していた(変動幅+13.3パーセントポイント〔95%信頼区間9.3~17.3〕)。また、RAの有無を問わず、角膜形状の最も平坦な部位(K1)と最も急峻な部位(K2)の差が1.0D以上の場合を角膜乱視(corneal astigmatism;CA)と定義すると、その有病率は同期間中に59.8%から64.7%へと上昇していた(変動幅+4.9パーセントポイント〔同0.5~9.2〕)。年齢、性別、本人の近視、親の乱視、世帯収入の影響を調整後、パンデミック前の2015~2019年に比較してRAは20%(オッズ比〔OR〕1.20〔1.09~1.33〕)、CAは26%(OR1.26〔1.15~1.38〕)、それぞれ有意に増加していた(ともにP<0.001)。また、対象全体でRAが0.04D(0.02~0.07)、CAが0.05D(0.02~0.08)上昇していた(ともにP<0.001)。このほかに、角膜形状のK2は、2015~2019年の44.15Dから2021年には44.2Dへと変化したことも明らかになった(変動幅+0.05D〔-0.01~0.11〕)。年齢、性別、球面度数を調整後、この変化は有意であった(P=0.03)。一方、K1は2015~2019年が42.91D、2022~2023年は42.85Dで、この変化は非有意だった(変動幅-0.06D〔-0.15~0.03〕)。以上一連の結果から、COVID-19パンデミックを境にRAとCAの有病率や重症度が上昇していることが示された。また、CAの有病率上昇にはK2の変化が部分的に関与していると考えられた。著者らは、「子どもたちの視力と生活の質を維持するために、乱視の環境要因や生活習慣要因の特定、病態生理の解明に向けた研究を推し進めるべきではないか」と述べている。なお、著者の1人が、近視抑制のための低濃度アトロピンの特許を申請中であること、および、OCUS Innovation社との利益相反(COI)に関する情報を開示している。(HealthDay News 2025年3月24日)https://www.healthday.com/healthpro-news/eye-care/prevalence-severity-of-pediatric-astigmatism-increased-after-pandemicCopyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
子どもの乱視の有病率や重症度が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックを挟み有意に上昇している実態が報告された。香港中文大学(中国)のKa Wai Kam氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Ophthalmology」に3月20日掲載された。COVID-19パンデミック中に、小児の近視が増加したことが報告されているが、乱視の有病率の変化は検討されていない。Kam氏らは、香港の全小学校から層別サンプリングされた生徒を対象に実施されている眼科検診受診児童のうち、調節麻痺下での屈折検査と角膜形状測定のデータがあり、先天性眼疾患および眼外傷や眼科手術の既往のない6~8歳児、2万1,655人(平均年齢7.31±0.90歳、男児52.9%)のデータを用い、この点を検討した。解析対象期間は、2015~2023年だった。円柱度数が1.0D以上の場合を屈折性乱視(refractive astigmatism;RA)と定義すると、その有病率は2015年の21.4%から、2022~2023年には34.7%に上昇していた(変動幅+13.3パーセントポイント〔95%信頼区間9.3~17.3〕)。また、RAの有無を問わず、角膜形状の最も平坦な部位(K1)と最も急峻な部位(K2)の差が1.0D以上の場合を角膜乱視(corneal astigmatism;CA)と定義すると、その有病率は同期間中に59.8%から64.7%へと上昇していた(変動幅+4.9パーセントポイント〔同0.5~9.2〕)。年齢、性別、本人の近視、親の乱視、世帯収入の影響を調整後、パンデミック前の2015~2019年に比較してRAは20%(オッズ比〔OR〕1.20〔1.09~1.33〕)、CAは26%(OR1.26〔1.15~1.38〕)、それぞれ有意に増加していた(ともにP<0.001)。また、対象全体でRAが0.04D(0.02~0.07)、CAが0.05D(0.02~0.08)上昇していた(ともにP<0.001)。このほかに、角膜形状のK2は、2015~2019年の44.15Dから2021年には44.2Dへと変化したことも明らかになった(変動幅+0.05D〔-0.01~0.11〕)。年齢、性別、球面度数を調整後、この変化は有意であった(P=0.03)。一方、K1は2015~2019年が42.91D、2022~2023年は42.85Dで、この変化は非有意だった(変動幅-0.06D〔-0.15~0.03〕)。以上一連の結果から、COVID-19パンデミックを境にRAとCAの有病率や重症度が上昇していることが示された。また、CAの有病率上昇にはK2の変化が部分的に関与していると考えられた。著者らは、「子どもたちの視力と生活の質を維持するために、乱視の環境要因や生活習慣要因の特定、病態生理の解明に向けた研究を推し進めるべきではないか」と述べている。なお、著者の1人が、近視抑制のための低濃度アトロピンの特許を申請中であること、および、OCUS Innovation社との利益相反(COI)に関する情報を開示している。(HealthDay News 2025年3月24日)https://www.healthday.com/healthpro-news/eye-care/prevalence-severity-of-pediatric-astigmatism-increased-after-pandemicCopyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock