米国が抱えるヘルスケアの課題の一つとして、健康格差の拡大が挙げられるが、今回、大卒で所得上位20%の層では心血管系疾患(CVD)の有害転帰の発生率が最も低いとする研究結果が、「The Lancet Regional Health: Americas」に3月6日掲載された。米国の人口のうち、裕福な上位20%とそれ以外の層ではCVDの転帰に格差が生じて、結果的に、健康格差全体に影響が及ぶ可能性が指摘されている。このような背景から、米ボストン大学公衆衛生大学院のSalma M. Abdalla氏らは、20年間にわたる所得と教育レベル別のCVDの転帰に関する疫学データを解析した。解析対象には、1999~2018年までに実施された米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータのうち、所得と教育の両方の情報がそろっている4万9,704人が含まれた。解析対象は、所得と教育レベルに応じて、「所得上位20%の大卒者」、「所得上位20%の大卒者以外」、「所得下位80%の大卒者」、「所得下位80%の大卒者以外」の4つのグループに分類された。CVDの転帰については、うっ血性心不全(CHF)、狭心症、心臓発作、脳卒中の4つの疾患について、所得・教育レベルグループごとに年齢調整有病率とオッズ比(OR)を算出した。「所得上位20%の大卒者」、「所得上位20%の大卒者以外」、「所得下位80%の大卒者」、「所得下位80%の大卒者以外」の割合はそれぞれ4,746人(14.2%)、4,016人(11.3%)、6,089人(14.0%)、3万4,853人(60.6%)であり、年齢・性別・人種などの各変数は群間で統計的に有意な差が認められた(カイ二乗検定、P<0.001)。4つのCVDの年齢調整有病率を算出し、各グループ間で有病率の比較を行った。その結果、最も顕著な差が認められたのが、「所得上位20%の大卒者」と「所得下位80%の大卒者以外」間であり、各有病率はCHF(0.5% vs 3.0%)、狭心症(1.4% vs 2.8%)、心臓発作(1.7% vs 3.9%)、脳卒中(1.1% vs 3.4%)となっていた。次に、ロジスティック回帰分析を用いて、グループごとに4つのCVDのORを算出した。「所得上位20%の大卒者」と各群を比較したところ、「所得下位80%の大卒者」と「所得下位80%の大卒者以外」では4ついずれのCVDのORも有意に高く(前者のOR の範囲1.48~3.67、後者のORの範囲 2.36~6.52)、「所得上位20%の大卒者以外」ではCHFと心臓発作のORも同様に高くなっていた(それぞれOR 3.11、OR 1.92)。著者らは「この研究は、健康格差の縮小に向け、継続的な取り組みをしているにも関わらず、CVDの有害転帰を防ぐための資源が人口の一部に集中していることを実証している。今後の研究では、米国におけるCVDの転帰に影響をおよぼす、所得と教育の相互作用のメカニズムに焦点を当てた縦断的研究を実施すべきである」と述べた。(HealthDay News 2025年3月15日)https://www.healthday.com/healthpro-news/cardiovascular-diseases/us-prevalence-of-adverse-cvd-outcomes-varies-with-income-educationCopyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock
米国が抱えるヘルスケアの課題の一つとして、健康格差の拡大が挙げられるが、今回、大卒で所得上位20%の層では心血管系疾患(CVD)の有害転帰の発生率が最も低いとする研究結果が、「The Lancet Regional Health: Americas」に3月6日掲載された。米国の人口のうち、裕福な上位20%とそれ以外の層ではCVDの転帰に格差が生じて、結果的に、健康格差全体に影響が及ぶ可能性が指摘されている。このような背景から、米ボストン大学公衆衛生大学院のSalma M. Abdalla氏らは、20年間にわたる所得と教育レベル別のCVDの転帰に関する疫学データを解析した。解析対象には、1999~2018年までに実施された米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータのうち、所得と教育の両方の情報がそろっている4万9,704人が含まれた。解析対象は、所得と教育レベルに応じて、「所得上位20%の大卒者」、「所得上位20%の大卒者以外」、「所得下位80%の大卒者」、「所得下位80%の大卒者以外」の4つのグループに分類された。CVDの転帰については、うっ血性心不全(CHF)、狭心症、心臓発作、脳卒中の4つの疾患について、所得・教育レベルグループごとに年齢調整有病率とオッズ比(OR)を算出した。「所得上位20%の大卒者」、「所得上位20%の大卒者以外」、「所得下位80%の大卒者」、「所得下位80%の大卒者以外」の割合はそれぞれ4,746人(14.2%)、4,016人(11.3%)、6,089人(14.0%)、3万4,853人(60.6%)であり、年齢・性別・人種などの各変数は群間で統計的に有意な差が認められた(カイ二乗検定、P<0.001)。4つのCVDの年齢調整有病率を算出し、各グループ間で有病率の比較を行った。その結果、最も顕著な差が認められたのが、「所得上位20%の大卒者」と「所得下位80%の大卒者以外」間であり、各有病率はCHF(0.5% vs 3.0%)、狭心症(1.4% vs 2.8%)、心臓発作(1.7% vs 3.9%)、脳卒中(1.1% vs 3.4%)となっていた。次に、ロジスティック回帰分析を用いて、グループごとに4つのCVDのORを算出した。「所得上位20%の大卒者」と各群を比較したところ、「所得下位80%の大卒者」と「所得下位80%の大卒者以外」では4ついずれのCVDのORも有意に高く(前者のOR の範囲1.48~3.67、後者のORの範囲 2.36~6.52)、「所得上位20%の大卒者以外」ではCHFと心臓発作のORも同様に高くなっていた(それぞれOR 3.11、OR 1.92)。著者らは「この研究は、健康格差の縮小に向け、継続的な取り組みをしているにも関わらず、CVDの有害転帰を防ぐための資源が人口の一部に集中していることを実証している。今後の研究では、米国におけるCVDの転帰に影響をおよぼす、所得と教育の相互作用のメカニズムに焦点を当てた縦断的研究を実施すべきである」と述べた。(HealthDay News 2025年3月15日)https://www.healthday.com/healthpro-news/cardiovascular-diseases/us-prevalence-of-adverse-cvd-outcomes-varies-with-income-educationCopyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock