米国で2024〜2025年のRSウイルス(以下、RSV)シーズンに広く使用可能になったRSVワクチンと長時間作用型のモノクローナル抗体ニルセビマブは、同シーズンにおける0~7カ月児、特に0~2カ月児のRSV関連入院率の低下と関連していたことが、米疾病対策センター(CDC)発行の「Morbidity and Mortality Weekly Report」5月8日号に掲載された論文で明らかにされた。 CDCのMonica E. Patton氏らは、2024〜2025年シーズンにおける5歳未満の乳幼児でのRSV関連入院率を、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック前(2018〜2020年)のシーズンと比較し、「母体へのRSVワクチン投与と乳幼児へのニルセビマブ投与が可能になったこと」と「乳幼児のRSV関連での入院」との関連を検討した。通常、ニルセビマブが投与されるのは、最初のRSVシーズンを経験する0〜7カ月児と、2回目のRSVシーズンを迎え、RSV感染症の重症化リスクが高い8〜19カ月児である。 解析には、RSV関連入院監視ネットワーク(RSV-Associated Hospitalization Surveillance Network;RSV-NET)と新ワクチン監視ネットワーク(New Vaccine Surveillance Network;NVSN)のデータを用いた。対象を、1)0〜7カ月児(妊娠中の母親のワクチン接種または本人へのニルセビマブ投与によりRSVに対し抵抗力を有する児)、2)8〜19カ月児(一部はニルセビマブを投与された可能性あり)、3)20〜59カ月児(これら予防策の対象外)の3群に分類した。入院率は、RSV-NETでは週単位、NVSNでは月単位で、米国人口データを用いて1,000人当たりのRSV関連入院数として算出した。比較の一貫性を保つため、累積入院率は全て2月末で区切った数とした。 RSV関連で入院した対象者の累計は1万8,389人であった。データベース別ではRSV-NETで1万5,405人、NVSNで2,984人、年代別では2018~2020年シーズンに1万1,681人、2024~2025年シーズンに6,708人であった。これらの年齢中央値は、RSV-NETでは2018~2020年シーズンで6.7カ月、2024~2025年シーズンで14.7カ月(P<0.001)、NVSNではそれぞれ6.3カ月、12.7カ月(P<0.04)であった。 2018〜2020年シーズンと比べて2024〜2025年シーズンでは、0〜7カ月児におけるRSV関連の累積入院率は低下していた。データベース別に見ると、RSV-NETでは1,000人当たり15.0人から8.5人、NVSNでは14.8人から10.7人となっていて、これらはそれぞれ入院率が43%および28%減少したことに相当した(いずれもP<0.001)。このような減少傾向は、特にRSVの流行がピークを迎える12〜2月に顕著だった。減少率が最も大きかったのは0~2カ月児だった(RSV-NETとNVSNの減少率はそれぞれ52%と45%、いずれもP<0.001)。一方、8~19カ月児および20~59カ月児でのRSV関連入院率は、2018~2020年シーズンよりも2024~2025年シーズンの方が高かった。 著者らは「今回の結果は、予防接種諮問委員会(ACIP)が発出するRSV感染症予防のための製品に関する勧告を実行するために必要な、実効性のある年間医療計画を策定すべきことを示すものである。また、RSV流行期に妊婦へワクチンを接種することや乳児へニルセビマブを投与することで、両親が可能な限り早い段階で児を守れるようになるものと考えられる。RSV流行期に生まれ、母体がワクチンを受けていない児には、生後1週以内、理想的には出産後の入院中にニルセビマブを投与すべきだ」と述べている。 なお、複数の著者が、バイオ医薬企業および医療技術企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2025年5月13日) https://www.healthday.com/healthpro-news/child-health/rsv-vaccines-nirsevimab-tied-to-reduced-rsv-linked-hospitalization Abstract/Full Texthttps://www.cdc.gov/mmwr/volumes/74/wr/mm7416a1.htm Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock