GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)の一種であるリラグルチドが、片頭痛による生活の負担を軽減する可能性を示唆するデータが報告された。肥満と片頭痛を併せ持つ成人患者において、頭痛日数と片頭痛による生活障害評価スコア(MIDASスコア)が、同薬の投与によって低下したという。フェデリコ2世ナポリ大学(イタリア)のSimone Braca氏らが行ったパイロット研究の結果であり、第11回欧州神経学アカデミー(EAN2025、6月21~24日、フィンランド・ヘルシンキ)で発表された。 片頭痛の世界的な有病率は14.7%とされ、頭痛発作のコントロールが困難な症例も少なくない。近年では、頭蓋内圧(ICP)のわずかな上昇が、頭蓋内コンプライアンスの低下や三叉神経伝導路の感作亢進を引き起こし、片頭痛を増悪させる可能性が報告されている。一方、GLP-1RAに関して、脳脊髄液(CSF)産生を抑制しICPを低下させ得るとの報告や、特発性頭蓋内圧亢進症(IIH)の頭痛頻度を改善するとの報告もある。これらの知見を背景に、Braca氏らはGLP-1RAによる片頭痛治療の可能性を、前向き観察研究により検討した。 この研究の対象は、同大学の関連医療機関である三次頭痛センターの、肥満(BMI30以上)を有する片頭痛患者26人。乳頭浮腫を認める患者はIIHの可能性を考慮して除外されている。リラグルチド1.2mgを12週間皮下投与し、標準化された頭痛日記により月平均頭痛日数を把握。主要評価項目は12週間後の頭痛日数の変化とし、副次的にBMIの低下、MIDASスコアの改善、有害事象を評価した。 12週間で月間平均頭痛日数は20.04±6.38日から8.81±6.01日へと有意に減少し(平均差11.23、P<0.001)、MIDASスコアも62.58点から27.23へと有意に低下した(同35.35、P<0.001)。BMIは34.01から33.65に低下したが、有意でなかった(P=0.060)。共分散分析の結果、BMIの低下が頭痛頻度に影響を与えるという関連は観察されなかった(B= 0.190、P=0.949)。有害事象として、消化器症状(主に嘔気と便秘)が10例(38%)に認められたが、軽度であり投与中止には至らなかった。 研究者らは、「GLP-1RA投与により体重がどの程度減少するかにかかわらず、同薬は片頭痛患者の頭痛発作による生活の負担を効果的に軽減するようだ。GLP-1RAは、片頭痛における髄液量および髄液圧調節という病態生理にかかわる作用を有しているのではないか。片頭痛の増悪因子であるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の放出をGLP-1RAが抑制する可能性もある。全く新しいICPのコントロール手段として同薬を利用できると考えられ、これらの知見の確認のため、より大規模な研究が必要とされる」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(HealthDay News 2025年6月30日) https://www.healthday.com/healthpro-news/neurology/liraglutide-may-reduce-migraine-burden-in-adults-with-obesity-migraine Abstract/Full Texthttps://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ene.70189 Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock