睡眠不足が健康に悪影響を及ぼすとするエビデンスの蓄積とともに近年、睡眠衛生は公衆衛生上の主要な課題の一つとなっている。しかし、睡眠不足がてんかん患者に与える長期的な影響は明らかでない。米ウォールデン大学のSrikanta Banerjee氏らは、米国国民健康面接調査(NHIS)と死亡統計データをリンクさせ、高齢てんかん患者の睡眠不足が全死亡リスクに及ぼす影響を検討。結果の詳細が「Healthcare」に4月23日掲載された。 2008~2018年のNHISに参加し、2019年末までの死亡記録を追跡し得た65歳以上の高齢者、1万7,319人を解析対象とした。このうち245人が、医療専門家からてんかんと言われた経験があり、てんかんを有する人(PWE)と定義された。 PWE群と非PWE群を比較すると、性別の分布(全体の39.2%が男性)や高血圧・糖尿病の割合は有意差がなかった。ただし年齢はPWE群の方が若年で(73.3±0.48対74.6±0.08歳)、現喫煙者・元喫煙者、肥満、慢性腎臓病(CKD)、心血管疾患(CVD)が多く、貧困世帯の割合が高いなどの有意差が見られた。睡眠時間については6時間未満、6~8時間、8時間以上に分類した場合、その分布に有意差はなかった。なお、以降の解析では睡眠時間7時間未満を睡眠不足と定義している。 平均4.8年の追跡期間中の死亡率は全体で37.3%、PWE群では46.5%、非PWE群は37.2%だった。非PWEかつ睡眠不足なし群を基準とする交絡因子未調整モデルの解析では、PWEかつ睡眠不足あり群の全死亡リスクが有意に高かった(ハザード比〔HR〕1.92〔95%信頼区間1.09~3.36〕)。 交絡因子(年齢、性別、人種/民族、飲酒・喫煙状況、教育歴、貧困、肥満、高血圧、糖尿病、CKD、CVDなど)を調整した解析でも、PWEかつ睡眠不足あり群はやはり全死亡リスクが有意に高かった(HR1.94〔同1.19~3.15〕)。それに対して、PWEで睡眠不足なし群は有意なリスク上昇が認められなかった(HR1.00〔同0.78~1.30〕)。 Banerjee氏らは、「てんかんと睡眠不足が並存する場合、予後が有意に悪化する可能性のあることが明らかになった。てんかん患者の生活の質(QOL)向上と生命予後改善のため、睡眠対策が重要と言える。臨床医は脳波検査に睡眠検査を加えたスクリーニングを積極的に行うべきではないか」と述べている。(HealthDay News 2025年5月19日) https://www.healthday.com/healthpro-news/neurology/all-cause-mortality-higher-with-sleep-deprivation-in-seniors-with-epilepsy Abstract/Full Texthttps://www.mdpi.com/2227-9032/13/9/977 Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock