ステロイド吸入薬のフルチカゾンプロピオン酸エステル(一般名)は、喘息の長期管理薬である。グラクソ・スミスクライン(GSK)社はこれを商品名フロベントとして販売していたが、2024年1月に市場から撤退させた。その結果、吸入ステロイド薬による治療を中断してしまう若年患者が増加した可能性があるとする研究結果が、米国小児科学会(4月24〜28日、米ホノルル)で発表されるとともに、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に4月26日掲載された。 米国では、2021年の米国救済計画法により、2024年1月から製薬会社がメディケイドプログラムに対して支払う払い戻し(リベート)の上限が撤廃された。これにより、フロベントのような薬剤ではリベートが薬価を上回る可能性が出てきたため、GSK社はフロベントを市場から撤退させた。一方、フロベントと同じ成分の「オーソライズド・ジェネリック(メーカー公認の後発薬)」の販売は継続されている。 米ミシガン大学アナーバー校のKao-Ping Chua氏らは、米国の薬局で処方された処方箋の約92%をカバーする大規模データIQVIA Longitudinal Prescription Databaseを用いて、フロベントの撤退により吸入ステロイド薬による治療を中断してしまう若年患者が増加したかを検証した。対象は2021年、2022年および/または2023年の各第4四半期に吸入ステロイド薬の処方を受けた0〜18歳の者とし、その期間にフロベントのみが処方されていた者を治療群(141万1,184人、男子58.0%;198万963人年)、フロベント以外の吸入ステロイド薬のみ(フロベントのジェネリックを含む)が処方されていた者を対照群(123万7,802人、男子58.6%;123万7,802人年)とした。 主要評価項目は治療の中断であり、各第4四半期の後9カ月間に吸入ステロイドの処方がなかった場合と定義した。例えば、2023年の第4四半期に処方された者では、2024年1〜9月の場合に吸入ステロイド薬の処方がなかった場合を中断と見なした。今回の解析は差分の差分法であり、線形モデルによって年齢、性などを調整して、2021〜2022年(撤退前)の変化と2023年(撤退後)の変化を比較した。 その結果、2021〜2022年の間では、対照群の中断率は治療群より1.4パーセントポイント(95%信頼区間1.1〜1.7)高かった。しかし、2023年には、2021〜2022年と比べて治療群の中断率が対照群よりも6.0パーセントポイント(同5.8〜6.3)高くなっていた。年齢別では、0~5歳児の中断率は6.5パーセントポイントと最も高く、保険別では、メディケイド加入者は6.6パーセントポイントと、民間保険加入者の5.2パーセントポイントより高かった。 著者らは、「本研究結果は、メディケイドに対する払い戻しの上限の撤廃が予期せぬ結果につながる可能性があることを示している」と述べている。(HealthDay News 2025年5月2日) https://www.healthday.com/healthpro-news/child-health/withdrawal-of-flovent-led-to-discontinuation-of-inhaled-steroids-for-children-with-asthma Abstract/Full Texthttps://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2832616 Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock