米国心臓協会(AHA)が2023年に開発した心血管疾患イベント(PREVENT)リスクスコアは、冠動脈カルシウム(CAC)を有する患者を正確に特定できるとする研究結果が、「The Journal of the American Heart Association」に5月21日掲載された。 PREVENTリスクスコアは、その開発と検証に600万人以上の患者を対象とする25のデータセットが使用されており、幅広い集団においてCVD予測に有用であることが示されているが、CACスコアとの関連性については明らかになっていない。そのような背景から、米ニューヨーク大学のAaron J. Rhee氏らは、リアルワールドの電子カルテデータを用いて、PREVENTリスクスコアと、冠動脈CTにより評価されたCACスコアとの関連を調べた。 解析にあたり、ニューヨーク大学Langone Healthの患者200万人以上の電子カルテが照会された。解析対象には、2010年から2024年までの間に冠動脈CTを受け、かつPREVENTリスクスコアの評価項目に欠損のない30歳から79歳までの患者6,961名が含まれた(中央値57.5歳、53%は女性、白人が77%)。CVDの既往のある患者は除外した。PREVENTスコアとCACスコアの関係は、連続変数としてスピアマンの相関係数、またPREVENTスコアの4つのリスクカテゴリー(<5%、5~7.5%、7.5~20%、>20%)ごとにANOVAで評価された。さらに、PREVENTスコアによるCACスコア(CAC≧1、CAC>100)の予測能は、ROC曲線下面積(AUC)を用いてロジスティック回帰モデルで評価された。CVDは心筋梗塞(ICD-10コードに基づく)と定義した。 解析の結果、PREVENTリスクスコアが5%未満、5~7.5%、7.5~20%、20%超であった患者はそれぞれ43.6%、15.8%、34.4%、6.2%であり、それぞれのカテゴリーにおけるCACスコアの中央値は0、0、19、101であったことを明らかになった。PREVENTリスクスコアとCACスコア間のスピアマン相関係数は0.47であり、有意な正の相関が認められた(P<0.001)。 PREVENTリスクスコアが5%未満の患者のうち24.6%がCACスコア1以上であり、リスクがスコア5〜7.5%の者では45.4%がCACスコア1以上であった。ロジスティック回帰モデルにより、PREVENTスコアはCACスコア1以上(AUC=0.755)およびCACスコア100超(AUC=0.761)の識別能が高いことが示された(いずれもP<0.001)。また、PREVENTリスクスコアにCACスコアを加えることで、心筋梗塞の発症予測における識別能が有意に向上した(c統計量の変化0.014、P<0.001)。逆に、CACスコアにPREVENTリスクスコアを加えた場合も、有意差は算出されなかったが、識別能は向上した(c統計量の変化0.022、P=0.09)。 共著者のMorgan E. Grams氏は、「この結果は、PREVENTが、症状が現れる前の動脈の閉塞、すなわち無症候性の心血管疾患リスクを有する人々を正確に特定できることを示している」と声明で述べている。 なお、1人の著者が、Heartflow社、Abbott Vascular社、Telemedicine社、Siemens社との利益相反(COI)を明らかにしている。(HealthDay News 2025年5月21日) https://www.healthday.com/healthpro-news/cardiovascular-diseases/prevent-risk-score-accurately-ids-people-with-coronary-artery-calcium Abstract/Full Texthttps://www.ahajournals.org/doi/10.1161/JAHA.124.038991 Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock