仕事環境は心血管疾患(CVD)のリスク因子と関連し、その関連性は人種、民族、性別によって異なる可能性があるという研究結果が、「BMC Public Health」に5月30日掲載された。 CVDはアメリカ人の主要な死因であり、米国におけるCVDの有病率が高い主な要因としては、食事の質の低下、高血圧、過体重、インスリン抵抗性、高コレステロール、睡眠不足などが挙げられる。加えて、仕事環境もCVDリスクに関与している可能性がある。特に、女性や人種的マイノリティは健康に不利な就業環境に置かれやすく、CVDリスクが高いことが指摘されている。一方で、自営業は柔軟な働き方により健康的な行動がとりやすく、ストレスや差別の軽減にもつながる可能性があるため、CVDリスクの低下に寄与することが期待されている。このような背景を踏まえ、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校のKimberly Narain氏らは、人種的・民族的マイノリティの地位および性別の違いを考慮して、自営業か否かの就業形態とCVDのリスク因子との関連について検討を行った。 本観察研究では、1999~2018年までの国民健康栄養調査(NHANES)のデータを用い、30~62歳の就業中・非妊娠の成人を対象に、自営業かどうかと心血管疾患リスク因子との関連を、人種・民族および性別の違いを考慮して分析した。リスク因子は10項目(高コレステロール、高血圧、肥満など)で、層別ロジスティック回帰モデルにより年齢や学歴などを調整した。係数推定値は予測マージンとして表した。 非就労者および妊婦を除外した結果、解析対象は19,395人となった。このうち2,104人(10.9%)が自営業で、3,584人(18.5%)は非マイノリティ女性、5,332人(27.5%)がマイノリティ女性、4,382人(22.6%)が非マイノリティ男性、6,097人(31.4%)がマイノリティ男性であつた。解析の結果(すべて調整後)、非マイノリティ女性では、自営業であることが肥満(差分-7.4%、P=0.008)、運動不足(同-7.0%、P=0.017)、睡眠不足(-9.4%、P=0.004)と負の相関を示した。マイノリティ女性においても、不健康な食事(-6.7%、P=0.024)、運動不足(-7.3%、P=0.013)、および睡眠不足(-8.1%、P=0.017)との負の相関が認められた。一方、非マイノリティ男性では、不健康な食事(-6.5%、P=0.008)および高血圧(-5.7%、P=0.013)と自営業との間に負の相関が認められたが、マイノリティ男性では、自営業とCVDリスク因子との間に有意な相関は確認されなかった。 著者らは、「自営業と心血管疾患のリスク因子には相関関係があり、この関係は男性よりも女性の方が強いことが示唆された。すべての人が健康的な仕事環境にアクセス出来るようにするためには、仕事環境がどのように私たちの心身に影響を及ぼすのかを理解することが極めて重要である」と述べている。(HealthDay News 2025年6月5日) https://www.healthday.com/healthpro-news/cardiovascular-diseases/work-context-linked-to-cardiovascular-disease-risk-factors Abstract/Full Texthttps://bmcpublichealth.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12889-025-22955-2 Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock