これまでの研究で、てんかんと前頭側頭型認知症(FTD)との関連性が示唆されてきているが、体系的なデータの裏付けは少ない。東フィンランド大学のAnnemari Kilpeläinen氏らは、FTD患者のてんかん有病率を、健常対照者(HC)やアルツハイマー病(AD)患者と比較する症例対照研究を実施。結果が「JAMA Neurology」に6月2日掲載された。 この研究では、フィンランドの認知症専門医療機関2施設の外来FTD患者と、年齢、性別、地理的条件をマッチングさせたHC群、およびAD患者群のてんかんの有病率、抗てんかん発作薬(ASM)の処方受取率が4時点で比較された。各群の該当者数と年齢(FTD群とAD群は疾患診断時年齢)、女性の割合は以下のとおり。FTD群245人(65.2±8.7歳、49.4%)、HC群2,416人(65.0±8.5歳、49.3%)、AD群1,326人(71.7±9.8歳、58.6%)。 解析の結果、FTD群においてFTD診断の10年前のてんかん有病率は3.3%であり、同時点におけるHC群の有病率は0.8%、AD群では1.4%だった。FTD群のてんかん有病率は、HC群(群間差2.5パーセントポイント〔ppt〕、P<0.001)、およびAD群(同1.9ppt、P=0.03)より有意に高かった。同様に、FTD診断の5年前の有病率は、FTD群4.9%、HC群1.3%、AD群1.7%であり、FTD群はHC群(3.6ppt、P<0.001)、AD群(3.2ppt、P=0.002)より有意に高かった。 FTDを診断された年のてんかん有病率は、前記と同順に6.5%、1.8%、5.0%であり、FTD群の有病率はHC群より有意に高く(4.7ppt、P<0.001)、AD群との比較では有意差がなかった(1.6ppt、P=0.32)。FTD診断の5年後は有病率が11.2%、2.2%、6.9%であり、HC群との比較で有意に高く(9.0ppt、P<0.001)、AD群との差の有意性は統計学的に境界値だった(4.2ppt、P=0.05)。 ASMの処方受取率については、FTD群ではFTD診断10年前に11.4%、診断5年前に16.7%、診断の年に28.6%、診断5年後に40.0%だった。それに対してHC群では同時点の処方受取率が5.0%、9.1%、14.6%、18.8%、AD群では5.6%、10.3%、17.8%、23.8%だった。FTD群の処方受取率は全ての時点で他の2群より有意に高かった。 論文の共著者の1人である同大学のEino Solje氏は、「この研究結果は、てんかんとFTDの関連性に関する新たな研究課題を提起している。すなわち、これら両疾患が何らかの病態生理学的メカニズムを共有しているのか、またはFTDが脳内神経回路の電気活動を変化させてんかんを惹起するのかという問題だ」と述べている。 なお、一部の著者が医薬品関連企業との利益相反(COI)の存在を開示している。(HealthDay News 2025年6月10日) https://www.healthday.com/healthpro-news/neurology/epilepsy-more-common-with-frontotemporal-dementia Abstract/Full Texthttps://jamanetwork.com/journals/jamaneurology/fullarticle/2834602 Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock