社会経済的格差が医療アクセスに影響を及ぼしていることが知られているが、てんかんによる救急外来の受診頻度との関連はこれまで検討されていない。米ラトガース大学ロバート・ウッド・ジョンソン医科大学のBrad K. Kamitaki氏らは、米国内4州(フロリダ州、メリーランド州、ニューヨーク州、ウィスコンシン州)の救急外来を受診した、発作またはてんかんを主訴とする成人患者対象の後ろ向きコホート研究でこれを検証。結果の詳細が「Epilepsia」に7月5日掲載された。 2016~2018年に、発作またはてんかんのため救急外来を受診した18歳以上の患者は、20万962人(平均年齢46.3±19.3歳、男性52.5%)だった。そのうち17万2,364人(85.8%)は、同期間の救急外来受診回数が1~2回であり、2万8,598人(14.7%)は3回以上の受診記録があって、さらに5回以上の受診記録も1万1,452人(5.7%)に認められた。 3回以上の救急外来受診記録がある場合を「頻繁な受診」と定義し、民間保険加入者を基準として比較すると、メディケア加入者(調整オッズ比〔aOR〕1.90〔95%信頼区間1.82~1.99〕)や、メディケイド加入者(aOR2.01〔同1.93~2.09〕)、および保険未加入者(aOR1.55〔1.48~1.62〕)は、その該当患者が有意に多かった。また、低所得地域(世帯所得中央値の最低四分位群)に居住する患者は、高所得地域(同最高四分位群)の患者よりも頻繁に救急外来を受診する患者が多かった(aOR1.65〔1.58~1.73〕)。 人種で比較した場合、黒人患者は白人患者より救急外来を頻繁に受診するオッズが60%高かった(aOR1.60〔1.55~1.65〕)。ただし、メディケアまたはメディケイドの加入者は民間保険加入者と比較して、人種による受診頻度の差が小さかった。また他の人種・民族間では頻繁な救急外来受診者の割合に有意差は観察されなかった。 K. Kamitaki氏らは、「貧困、医療費、そして人種による格差といった根深い問題は、医療従事者の力だけでは到底、解決がおぼつかない。包括的かつ多方面にわたるアプローチが必要だ」と述べている。ただし、「そうだとしてもなお、臨床医や研究者は、患者のために活動し、政策立案者を巻き込み、これらの課題に対応するためのリソースとエビデンスに基づく戦略を提供することを通して、重要な役割を果たすことができる」とも付け加えている。(HealthDay News 2025年7月14日) https://www.healthday.com/healthpronews/neurology/socioeconomic-disparities-contribute-to-frequent-ed-visits-for-seizure Abstract/Full Texthttps://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/epi.18525 Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock