小児がんサバイバーは、新型コロナウイルス(COVID-19)への感染リスクは低いが、感染した場合に重症化するリスクは一般集団よりも高いとする研究結果が、「The Lancet Regional Health: Europe」に7月4日掲載された。 カロリンスカ研究所(スウェーデン)のJavier Louro氏らは、デンマークおよびスウェーデンの登録データに基づくコホート研究を実施し、成人となった小児がんサバイバーが一般集団と比較して、COVID-19への感染リスクおよび重症化リスクが高いか否かを検討した。COVID-19の重症化は、1泊以上の入院、集中治療室(ICU)入室、または死亡とした。COVID-19パンデミック時、デンマークでは学校や職場の閉鎖などの厳格な感染対策が講じられたのに対し、スウェーデンでの対策は、学校閉鎖を推奨にとどめるなど比較的緩やかだった。 両国の全国がん登録を用いて、19歳以下でがん(非悪性の中枢神経系腫瘍も含む)と診断され、5年以上生存した者(小児がんサバイバー)を全て特定して「症例」とし、生年、性別、国(スウェーデンでは自治体も)を一致させた対照を、症例1人につき5人、一般集団から無作為に抽出した。また、家族に共通する要因(交絡因子)を調整するため、症例と年齢差10歳以内の兄弟姉妹も特定した。最終的に、2020年1月1日時点で20歳以上である症例1万3,659人(平均年齢40.8歳)、対照5万8,803人(同40.0歳)、兄弟姉妹1万7,531人(同40.8歳)を解析対象とし、2020年1月1日から2022年12月31日まで(移住または死亡のいずれかが先に生じた場合はその時点まで)追跡した。 Cox比例ハザードモデルによる解析の結果、症例、すなわち小児がんサバイバーでは対照と比較してCOVID-19に感染するリスクが有意に低いことが示された(調整ハザード比〔aHR〕0.91、95%信頼区間〔CI〕0.89〜0.94)。この結果は、2020年時点の年齢、性別、小児がん診断時の年齢などで層別化したサブグループ解析でも同様であった。ただし、パンデミック前半(2020年1月〜2021年6月)の期間においては、デンマークではリスクが有意に低かったのに対し(同0.79、0.67〜0.92)、スウェーデンでは有意な差は見られなかった(同0.95、0.89〜1.01)。 COVID-19の重症化については、小児がんサバイバーのリスクは、対照より58%高かった(aHR 1.58、95%CI 1.25〜1.98)。サブグループ解析を行ったところ、特にリスクが高かったのは、2020年時点の年齢が50歳以上の者(同1.85、1.35〜2.54)、スウェーデン(同1.65、1.25〜2.17)、固形がんのサバイバー(同1.63、1.25〜2.13)、がん診断時の年齢が15歳以上だった者(同2.28、1.65〜3.14)であった。以上に加え、兄弟姉妹との比較を同様な方法で行ったところ、感染リスクについても重症化リスクについても、ほぼ同様な結果が得られた。 Louro氏は、「将来、パンデミックその他の健康危機が起こった場合、小児がんサバイバーはリスクの高い集団であると見なすべきであり、ワクチン接種を優先的に行ったり、感染拡大期には特別な保護策を講じたりすべきだろう」と述べている。(HealthDay News 2025年7月11日) https://www.healthday.com/healthpro-news/coronavirus/risk-for-severe-covid-19-elevated-for-childhood-cancer-survivors Abstract/Full Texthttps://www.thelancet.com/journals/lanepe/article/PIIS2666-7762(25)00155-3/fulltext Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock