心疾患による死亡率は、長年にわたって米国における主要な公衆衛生上の課題であり続けてきた。今回、1970年から2022年にかけて、心疾患による全体的な死亡率は減少したものの、心不全、高血圧性心疾患、不整脈など虚血性心疾患以外の心疾患による死亡率は増加していた、とする研究結果が、「Journal of the American Heart Association」に6月25日掲載された。 米国では心疾患が1世紀以上にわたり死因の首位を占めており、虚血性心疾患の死亡率は医療技術の進歩やリスク管理の成果により1960年代以降大きく減少した。一方で近年、高血圧性心疾患や心不全、不整脈など他の心疾患による死亡率は増加傾向にあり、こうした動向の把握は公衆衛生対策や臨床介入に不可欠である。このような背景から、米スタンフォード大学医学部のSara J. King氏らは、米国疾病予防管理センター(CDC)の全国死亡統計システム(National Vital Statistics System)および疫学研究向け広範オンラインデータ(WONDER)を用いて、1970年から2022年にかけて、25歳以上の米国成人における心疾患死亡率の長期的な傾向を調査した。 解析の結果、1970年から2022年にかけて、年齢調整後の心疾患による全体の死亡率は、人口10万人あたり761人から258人へと66%減少したことが明らかになった。1970年には心疾患による死亡の91%が虚血性心疾患によるものだったが、2022年にはその割合は53%にまで低下した。年齢調整後の死亡率は、急性心筋梗塞で89%(人口10万人あたり354人から40人へ)、虚血性心疾患全体で81%(人口10万人あたり693人から135人へ)減少した。一方で、虚血性心疾患以外の心疾患による年齢調整後死亡率は同期間に81%増加(人口10万人あたり68人から123人へ)しており、特に心不全で146%、高血圧性心疾患で106%、不整脈で450%という大幅な増加がみられた。 King氏は「この50年間の変化は、心筋梗塞やその他の虚血性心疾患の管理における驚異的な成功を示している。しかし、その一方で心不全や不整脈など虚血性心疾患以外の心疾患による死亡の大幅な増加は、医療界が対処すべき新たな課題を突きつけている」と声明で述べている。 なお、複数の著者が製薬企業との利益相反(COI)を明らかにしている。(HealthDay News 2025年7月1日) https://www.healthday.com/healthpro-news/cardiovascular-diseases/1970-to-2022-saw-decrease-in-overall-heart-disease-mortality Abstract/Full Texthttps://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/JAHA.124.038644 Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock