2026年度診療報酬改定(以下、26年度改定)に向けて、社会保障審議会医療保険部会(以下、医療保険部会)は9月26日、厚生労働省(以下、厚労省)が提示した診療報酬改定の基本方針(以下、基本方針)の方向性について了承した。また、「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(以下、専門委員会)での議論の状況について報告があり、今後も連携しながら検討していくことを確認した。 基本方針は12月上旬を目途に、医療保険部会と社会保障審議会医療部会が合同で決定することになっている。9月26日の医療保険部会はその2回目の議論で、厚労省が、26年度改定に当たっての基本認識、それを踏まえての基本認識、基本的視点、具体的方向性について内容案を例示した。 厚労省は基本認識の具体例として、(1)日本経済が新たなステージに移行しつつある中での物価・賃金の上昇、人口構造の変化や人口減少の中での人材確保、現役世代の負担の抑制努力の必要性、(2)2040年頃を見据えた、全ての地域・世代の患者が適切に医療を受けることが可能かつ、医療従事者も持続可能な働き方を確保できる医療提供体制の構築、(3)医療の高度化や医療DX、イノベーションの推進等による、安心・安全で質の高い医療の実現、(4)社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和――の4つを掲げた。特筆すべきは現役世代の負担の抑制に言及した点だ。 厚労省が提示した基本認識、基本的視点などについて医療保険部会では特に異論はなく、了承された。過去の診療報酬改定においても基本的視点は4つ設けられているが、うち1つ程度を重点課題に位置付けている。それに関して、診療側委員が「緊急的な対応が必要な物価、賃金、人手不足については重点項目として位置付けていただきたい」と要望した。支払側委員からは「基本認識、基本的視点の4項目は密接に関連する重要なテーマと考えており、どれか1つを重点課題にするのではなく、全てを総合的に解決することが最大の課題ではないか」との発言が出た。 医療保険制度改革全体の中で高額療養費制度を議論 高額療養費制度の見直しについて、政府は、長期療養患者など関係者の意見を丁寧に聴いた上で、2025年秋までに方針を検討し、決定することにしている。それを検討する組織として5月、医療保険部会の下に専門委員会が設置されており、今回の医療保険部会では、そこでの主な意見、今後の議論(案)が報告された。 専門委員会で意見・認識が一致したのが、(1)今後も高額療養費制度を堅持していくこと、(2)医療保険制度改革全体の中で全体感を持って議論していくことが必要――などである。それらを踏まえて今後、議論を深める点については、給付と負担のあり方とともに、制度を見直す場合の配慮などが挙げられている。例えば、長期にわたって治療を受ける患者などの経済的負担への配慮として、年間での自己負担に上限を設けることも意見として出されている。 医療保険部会では、保険者を代表する委員が、レセプトの高額化が進んでいることを報告した上で、「高額化している医薬品の効果を検証するとともに、保険者のデータも活用しながら議論していただきたい」と要望した。 また、医療保険部会では年末に向けて医療保険制度改革についての議論を進めており、そこでの議論を専門委員会にフィードバックし、両者が連携して医療保険制度改革全体の中で高額療養費制度について検討を進めることを確認した。(HealthDay News 2025年10月8日).参考文献https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_63945.html Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved. カテゴリー:診療報酬