小児科医が喘息と診断した若年者のうち、国際ガイドラインに基づく客観的検査基準(2種類以上の検査が陽性)を満たしたのは63%であったことが、「Pediatric Pulmonology」に8月8日掲載された論文で明らかになった。 コペンハーゲン大学(デンマーク)のMarie Hauerslev氏らは、小児喘息の診断に対するゴールドスタンダードがないことから、国際ガイドラインの診断基準に適合する例と適合しない例につき、肺機能改善の程度や治療の遵守状況を比較した。対象は、デンマークの喘息外来クリニックで小児科医により喘息の診断を受けた5〜18歳の若年者115人(平均年齢11.9歳、男子59%)。研究対象期間は5年間で、最初の2年間は各種検査により診断基準を満たすか否かを確認し、満たした場合には、最初の30日以内に満たした場合を早期例、30日超なら晩期例とした。残りの3年間は追跡期間として、各種検査の変化を見た。 初診時にスパイロメトリー、呼気中一酸化窒素(FeNO)測定、皮膚プリックテストや特異的IgE血液検査、スパイロメトリー検査の結果や症状に応じて気管支拡張薬反応(BDR)検査、運動負荷試験を実施した。診断期間において、1)1秒量(FEV1)予測値<80%、2)FEV1/努力肺活量比<80%、3)BDR検査でFEV1が12%以上改善、4)FeNO≧25ppb、5)運動試験でFEV1が10%以上低下、またはマンニトール負荷試験で15%以上低下、のうち2つ以上が陽性の場合を「ガイドラインの基準を満たす例」と定義した。 ガイドラインの基準を満たす例に該当したのは72人(63%)であった。線形混合効果モデルを用いて肺機能の経時的な変化を解析したところ、基準を満たしたか否かに関わらず全例でFEV1%予測値に改善が認められたが、その年間上昇率は、基準を満たさない例に比べ、満たす例が有意に高かった(β係数5.4〔95%信頼区間〔CI〕4.5〜6.3〕対3.7〔同2.5〜4.9〕、P=0.026)。 擬ポアソン回帰により急性の喘息発作の発生について検討したところ、その発生率比(IRR)は、基準を満たさない例に比べ、満たす例が有意に高かった(IRR 4.7、95%CI 1.6〜21.0、P=0.017)。さらに、ロジスティック回帰分析により、救急外来での治療または入院の頻度を比較したところ、基準を満たす例では10件であったが、満たさない例では1件のみと有意差を認め(OR 6.8、95%CI 1.22〜126.6、P=0.024)、経口ステロイド薬の処方も基準を満たす例で有意に多かった(同6.0、1.1〜112.7、P=0.04)。一方、治療遵守については、基準を満たす例と満たさない例との間に有意差はなかった。また早期例(43人)と晩期例(29人)との間で、肺機能の改善や急性喘息発作のリスクに有意差はなかった。 著者らは、「2種類以上の検査が陽性であった例では、急性発作がより多く発生したこと、また治療効果も高かったことを踏まえると、喘息の診断において客観的な検査が大きな意味を持つことが理解できるだろう。しかし、陽性だった検査が2回未満の例でも、肺機能は改善しており、急性発作も起こっていた。このことから、小児喘息に対しては包括的な診断アプローチを行うことが重要であると考えられる」と述べている。(HealthDay News 2025年8月14日) https://www.healthday.com/healthpro-news/pulmonology/six-in-10-children-with-asthma-meet-guideline-diagnostic-criteria Abstract/Full Texthttps://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/ppul.71220 Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock