人が頭の中で思い浮かべた言葉を「聞き取り」、音声化できる新しい脳インプラントの開発に関する研究成果が、「Cell」に8月14日掲載された。 米スタンフォード大学のErin M. Kunz氏らは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)あるいは脳幹梗塞により発話が困難な4人の患者を対象に、自然なコミュニケーションを取り戻すためのデバイス開発のため実験を行った。 まず、BrainGate脳コンピュータインターフェース(BCI)の電極アレイを、発話を制御する運動野に埋め込み、参加者に特定の単語の発話を試みたり頭の中で思い浮かべたりするよう指示を出した。BCIは参加者のその単語の音素に関わる脳活動を検出し、人工知能(AI)がそれらを文章に変換した。その結果、頭の中で思い浮かべる「内的発話(inner speech)」の信号は発話を試みる際の信号よりも微弱ではあるものの、リアルタイムで最大74%の認識精度に達した。 一方で、プライバシーに関する懸念も浮上した。BCIは、時に研究者が指示していない言葉、例えば、参加者が頭の中で数を数えていた数字なども検出したのである。そこで研究チームは、参加者が特定のフレーズを思い浮かべた場合にのみBCIに解読を許可する「パスワード」機能を開発し、導入した。本実験では「chitty chitty bang bang」というフレーズを合図に設定したが、これで不要な解読を98%の確率で防ぐことができた。 上席著者である同大学のFrank R. Willett氏は、「従来のスピーチBCIは、実際に発話を試みる必要があるため、時間がかかり疲労を伴うことがあった。また、意図しない発声や呼吸の制御が困難になるケースもあった。この研究は、『内的発話』だけで流暢で自然かつ快適なコミュニケーションを回復できる可能性を示すもので、真の希望を与えるものだ」と述べている。(HealthDay News 2025年8月15日) https://www.healthday.com/health-news/neurology/new-brain-implant-could-let-people-speak-just-by-thinking-words More informationhttps://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(25)00681-6 Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock