1型糖尿病の発症から間もない時期に抗胸腺細胞グロブリン(ATG)を投与することで、膵β細胞機能の低下が抑制されるとする研究結果が、欧州糖尿病学会年次総会(EASD2025、9月15~19日、オーストリア・ウィーン)で発表されるとともに、論文が「The Lancet」9月27日号に掲載された。 1型糖尿病は治療が大きく進歩したにもかかわらず、依然として疾病負担の大きな疾患である。1型糖尿病の発症は、自己抗体の出現(ステージ1)、血糖異常(ステージ2)、インスリン依存状態(ステージ3)という経過をたどることが明らかにされている。それにもかかわらず、いまだに治療の重点はインスリン療法におかれている。しかし近年、疾患修飾療法の臨床応用が注目されてきており、ATGも1型糖尿病発症早期の進行抑制に有効な可能性が示唆されている。 今回発表された研究は、英国、デンマーク、ドイツ、フィンランド、イタリア、ベルギー、オーストリア、スロベニアという8カ国の14施設が参加し、第2相二重盲検ランダム化プラセボ対照試験として実施され、ルーヴェン・カトリック大学(ベルギー)のChantal Mathieu氏らが結果を報告した。2020年11月24日~2023年12月13日に、3~9週間前に臨床ステージ3の1型糖尿病と診断されていた5~25歳の参加者117人(男性46%)を、プラセボ群、および、投与量が異なる4種類のATG群(体重1kg当たり0.1、0.5、1.5、2.5mg)の計5群にランダムに割り付け。主要評価項目を、12カ月後の食事負荷試験におけるCペプチド上昇曲線下面積の対数変換値であるln(AUC Cペプチド+1)とした。なお、0.1および1.5mg/kg群は、試験中に除外された。 12カ月時点のln(AUC Cペプチド+1)は、プラセボ群が0.411±0.032nmol/L/分、ATG2.5mg/kg群は0.535±0.032nmol/L/分であり、平均差0.124nmol/L/分(95%信頼区間0.043~0.205〔P=0.0028〕)と有意だった。またATG0.5mg/kg群は0.513±0.032nmol/L/分で、プラセボ群との平均差0.102nmol/L/分(同0.021~0.183〔P=0.014〕)とやはり有意だった。 有害事象としては、サイトカイン放出症候群がATG2.5mg/kg群で33人中11人(33%)、ATG0.5mg/kg群では34人中8人(24%)に発現し、プラセボ群では発現しなかった。アレルギー反応(血清病)は同順に、27人(82%)、11人(32%)に発現し、プラセボ群では発現しなかった。有害事象による死亡はなかった。 著者らは、「発症から間もない若年1型糖尿病患者では、2.5mg/kgまたは0.5mg/kgのATGによりβ細胞機能の喪失が抑制され、この集団における疾患修飾薬となり得ることが示された」と結論付けている。またMathieu氏は、「ATG0.5mg/kgのコストは非常に安価であり、世界の多くの国で利用可能だ」と付け加えている。 なお、数人の著者がバイオ医薬品企業および医療テクノロジー関連企業との利益相反(COI)に関する情報を開示している。(HealthDay News 2025年9月29日) https://www.healthday.com/healthpro-news/diabetes/antithymocyte-globulin-cuts-loss-of-cell-function-in-type-1-diabetes Abstract/Full Texthttps://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(25)01674-5/abstract Editorialhttps://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(25)01773-8/abstract More Informationhttps://www.easd.org/annual-meeting/easd-2025/ Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock