COVID-19パンデミック以前の2013年から2018年にかけて、心不全、脳卒中、高血圧を有する高齢者では「Life's Essential 8(LE8)」スコアが有意に低下していたとする研究結果が、「Journal of the American Heart Association」に8月20日掲載された。 米国では高齢化に伴い心血管疾患(CVD)が増加し、65歳以上では死因の約4割を占めると予測される。経済的負担も2020年の4000億ドルから2050年には1兆3440億ドルへと約3倍に拡大すると見込まれる。しかし高齢者における予防戦略改善の知見は乏しく、心血管健康の理解が重要である。アメリカ心臓協会の提唱するLE8は心血管健康を定量化する指標であるが、これまでの研究は臨床的にCVDを有さない人々に焦点を当てていた。加えて、COVID-19が心血管健康に大きな影響を与えていた可能性があるため、パンデミック以前のLE8のベースラインを調べることは重要である。こうした背景を踏まえ、米ノースウェスタン大学フェインバーグ医学院のJames M. Walker氏らは、CVDを患う高齢者におけるLE8スコアのCOVID-19パンデミック以前の傾向を調査した。 解析対象は、米国国民健康栄養調査(NHANES)2013~2018年のデータに基づく、施設に入所していない65歳以上の高齢者とした。全体のLE8スコア(範囲0〜100、高いほど心血管健康が良好)は、参加者全員について算出された。CVDの診断は自己申告によるもので、冠状動脈性心疾患、脳卒中、心不全、高血圧、狭心症、心筋梗塞が含まれた。2013年から2018年までのLE8スコアの変化率は診断群ごとに算出し、群内での変化の有意性を線形回帰により検定した。全ての解析の有意水準は両側0.05とした。 65歳以上の解析対象は3,050人となった(女性54.7%、平均年齢72.6歳 )。この人数は施設に入所していない3790万8,305人を代表している。LE8スコアは、CVDの有無にかかわらず、2013〜2014年および2017〜2018年の間で概ね安定するか低下する傾向が見られた。平均LE8スコアの有意な低下は以下の群で認められた。高血圧群では4.1%低下(59.6から57.1へ、P=0.006)、脳卒中群では11.5%低下(60.6から53.6へ、P=0.01)、心不全群では15.2%低下(60.9から51.6へ、P<0.001)であった。 Walker氏は、「心血管疾患を持つ人では、身体活動と血圧のスコアが非常に低い傾向がある。平均すると、心血管疾患を1つ持つ参加者のLife's Essential 8スコアは、心血管疾患のない人よりも9ポイント低い。この差は、血圧と身体活動のスコアが低いことによって説明される」と述べた。(HealthDay News 2025年8月20日) https://www.healthday.com/healthpro-news/cardiovascular-diseases/seniors-with-certain-cardiovascular-diseases-saw-lifes-essential-8-scores-decline-2013-to-2018 Abstract/Full Texthttps://www.ahajournals.org/doi/10.1161/JAHA.124.039659 Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock