思春期前に父親が受動喫煙を受ける、つまり、父親が子の祖父母の喫煙にさらされると、子の肺機能にも悪影響が及ぶ可能性があることを示した研究結果が、「Thorax」に9月2日掲載された。 メルボルン大学(オーストラリア)のJiacheng Liu氏らは、1968年に開始されたタスマニア縦断健康研究(TAHS)に参加した890組の父子を対象に、父親の思春期前の受動喫煙曝露と、その子の小児期から中年期までの肺機能との関連を検討した。子は1961年生まれで、試験開始時(7歳時)にスパイロメトリーを受け、その後、13、18、43、50、53歳の時点で、スパイロメトリーや人口学的情報、呼吸器症状・疾患に関し、追跡調査が行われた。スパイロメトリーでは、1秒量(FEV1)、努力肺活量(FVC)、FEV1/FVC比が測定された。父親の受動喫煙の有無は、2010年のTAHSの追跡調査時に父親に対し、5歳未満および5〜15歳時において、父親の父親や母親が喫煙していたか否かを尋ねる質問により確認した。子の肺機能(FEV1、FVC、FEV1/FVC比)の追跡調査の各年齢間における変化の状態を調べ、これらと父親の思春期前の受動喫煙との関連を、多項ロジスティック回帰分析により評価した。 対象とされた890組の父子では、父親の思春期前の受動喫煙率は68.7%、子の小児期(7歳まで;以下同)の受動喫煙率は56.5%であった。また、子の49%は中年期(53歳;以下同)までに能動喫煙歴を有し、5.1%は中年期までにスパイロメトリーで慢性閉塞性肺疾患(COPD)の基準を満たしていた。解析の結果、父親が思春期前に受動喫煙に曝露していると、子のFEV1が、7歳から53歳までの対象全体の平均(zスコアによる)以下の経過をたどるリスクが有意に高くなった(調整多項式オッズ比〔aMOR〕1.56、95%信頼区間〔CI〕1.05〜2.31、P=0.028)。また、父親の思春期前の受動喫煙は、子のFEV1/FVCが早期に急速に低下する経過とも有意に関連していたが(同2.30、1.07〜4.94、P=0.033)、FVCとの関連は有意ではなかった。 父親の思春期前の受動喫煙と、子のFEV1が平均以下の経過をたどることとの関連について媒介分析を行ったところ、13.7%が父親の能動喫煙、13.4%が子の中年期までの能動喫煙、10.9%が子の小児期の受動喫煙により媒介されることが示された。一方、子のFEV1/FVC比が早期に急速に低下する経過への関連については、14.8%が子の小児期の喘息/喘鳴、12.4%が小児期の受動喫煙、11.3%が父親の能動喫煙により媒介されていた。 尤度比検定により曝露×効果修飾因子(父親の能動喫煙、子の性別・小児期の呼吸器疾患・小児期の受動喫煙・中年期までの能動喫煙)の交互作用を評価した。その結果、父親の思春期前の受動喫煙と子の肺機能の経過との関連は、子の小児期の受動喫煙(p-interaction=0.053)、小児期の肺炎/胸膜炎(p-interaction=0.008)、小児期の食物アレルギー(p-interaction=0.071)などで修飾されており、特に、父親の受動喫煙と子のFEV1が平均以下の経過をたどることとの関連は、子が小児期に受動喫煙にさらされていた場合により強くなった(aMOR 2.36、95% CI 1.34〜4.13、P=0.003)。 著者らは、「これらの結果は、喫煙が、喫煙者自身のみならずその子や孫の肺機能にも悪影響を及ぼす可能性があることを示している。思春期前に受動喫煙にさらされた父親は、子の前で喫煙しないようにすることで、将来の世代の肺機能低下のリスクを軽減できる可能性がある」と述べている。(HealthDay News 2025年9月4日) https://www.healthday.com/healthpro-news/pulmonology/paternal-prepubertal-passive-smoke-exposure-impacts-offspring-lung-function Abstract/Full Texthttps://thorax.bmj.com/content/early/2025/08/27/thorax-2024-222482 Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock