肥満を理由に人工肩関節置換術を制限する動きに対し、反証となる大規模データが示された。英国とデンマークのレジストリを用いた解析では、肥満患者で術後アウトカムの悪化は確認されず、むしろ注意すべきは低体重患者である可能性が示唆された。BMIに基づく手術制限を再考させる結果といえる。詳細は11月20日付で「PLOS Medicine」に掲載された。 股関節・膝関節置換術ではBMIを理由に手術が制限される例があるが、根拠は乏しく不当な医療格差を生んでいるとの指摘がある。肩関節置換術ではBMI基準は設けられていないものの、肥満と術後成績の関連は報告ごとに一貫しておらず、特に再置換術のリスクは研究間で差が大きい。短期成績のみの評価あるいは交絡調整が不十分な研究も多く、需要増が続く中で不要な制限を避けるためにはより厳格なエビデンスが必要となる。そのような背景を踏まえ、英オックスフォード大学のEpaminondas Markos Valsamis氏らは、英国とデンマークの大規模データでBMIと合併症、インプラント生存率との関連を検証した。 本研究では、英国のNational Joint Registry(NJR:2018年6月1日~2022年12月30日)と、デンマークのDanish Shoulder Arthroplasty Registry(DSR:2006年1月1日~2021年12月31日)のデータを用いた。解析対象は、18〜100歳で初回の肩関節置換術を受けた患者とした。主要評価項目は手術後365日以内の全死亡とし、副次評価項目には手術後90日以内の全死亡、90日以内の重篤な有害事象(入院を要する合併症と定義)、および手術後4.5年以内の再置換術を含めた。BMIと患者アウトカムの関連は、年齢、性別、重複剥奪指標、主たる手術適応、ASA(米国麻酔科学会)スコアで調整したうえで、柔軟なパラメトリック生存モデルとロジスティック回帰モデルを用いて評価した。 英国の集団には2万839人に対して実施された2万2,044件の肩関節置換術が、デンマークの集団には8,976人に対して実施された1万155件の肩関節置換術が含まれた。このうち手術時のBMIおよびASAスコアが利用できるものを解析対象とし、英国の集団では1万5,320件(女性 68.3%、平均年齢 72.2歳、平均BMI 29.4kg/m2)、デンマークの集団では5,446件(女性 65.3%、平均年齢 70.5歳、平均BMI 28.0g/m2)が対象となった。 英国のデータでは、BMI 40㎏/m²の肥満患者は、BMI 21.75㎏/m²の患者と比べて術後365日以内の死亡リスクが低かった(ハザード比〔HR〕 0.40、95%信頼区間〔CI〕 0.21~0.73)。一方、BMI<18.5㎏/m²の低体重患者では死亡リスクが高かった(HR 1.18、95%CI 1.06~1.32)。デンマークのデータでもこれらの関連が同様に認められた。 また、副次評価項目では、英国データにおいてBMI<18.5 kg/m² の低体重患者は、術後90日以内の死亡(HR 1.69、95% CI 1.14~2.52)、90日以内の重篤な有害事象(OR 1.36、95% CI 1.05~1.77)、および再置換手術(HR 1.70、95% CI 1.25~2.33)のいずれもリスクが高かった。一方で、同じ英国データではBMIの上昇に伴うリスク上昇は認められず、デンマークのデータでも同様であった。 Valsamis氏は、「肩の人工関節置換術は痛みを大きく軽減し生活の質を高める治療である。今回の研究はBMIが高い患者でも術後アウトカムが悪化しないことを示しており、BMIのみに基づいて肩関節置換術を制限すべきではない」と述べた。 なお本研究の限界として、BMIデータの欠損が多かったこと、BMI<18.5 kg/m²の低体重患者が少なかったこと(英国131例、デンマーク70例)を挙げている。(HealthDay News 2025年11月21日) https://www.healthday.com/healthpro-news/bone-and-joint/patients-with-underweight-have-poorer-outcomes-after-shoulder-replacement Abstract/Full Texthttps://journals.plos.org/plosmedicine/article?id=10.1371/journal.pmed.1004786 Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock