1HDN7月17日「パッケージニュース」No.4

アルツハイマー病の進行抑制にアスピリンが有効か

アスピリンを服用するとアルツハイマー病の進行を抑制できる可能性のあることが、米ラッシュ医科大学神経学のKalipada Pahan氏らのマウスを用いた実験で示唆された。アルツハイマー病には脳内のアミロイドβ(Aβ)と呼ばれるタンパク質の蓄積が関与していると考えられているが、低用量アスピリンは脳内に蓄積したAβの除去に役立つ可能性があることが示されたという。研究の詳細は「The Journal of Neuroscience」7月2日オンライン版に掲載された。

アルツハイマー病の原因はいまだ解明されていないが、毒性があるAβが脳内に蓄積してアミロイドプラークを形成することがその一因と考えられている。そのため、アルツハイマー病の進行を遅らせるための手段として、脳内のAβ除去を担う細胞機構を活性化させる方法が注目されている。

Pahan氏らはまず、マウスの脳細胞を用いた実験で、アスピリンはPPAR(ペルオキシソーム増殖剤活性化レセプター)αと呼ばれる遺伝子発現の調節因子を活性化することで、脳内のAβ除去に重要な調整役(マスターレギュレーター)を担う転写因子EB(TFEB)の発現量を増やし、Aβ除去に関わるリソソームの合成を高めることを突き止めた。

さらに、アルツハイマー病のモデルマウスに低用量アスピリンを1カ月にわたり経口投与して調べた結果、アスピリンはPPARαを介した作用によりアミロイドプラークの除去に働くことが分かったという。

以上の結果を踏まえ、Pahan氏は「世界で最も汎用されている一般用医薬品の一つであるアスピリンには、鎮痛や心血管疾患予防以外にもアルツハイマー病などの認知症に関連した疾患への新たな治療効果が期待できる可能性が示された」と結論づけている。

動物実験の結果は必ずしもヒトで応用できるわけではなく、Pahan氏もアスピリンの認知症への治療効果についてはさらなる研究が必要であることを強調している。しかし、同氏は「今回の研究によってアミロイドプラークが除去される機序の解明を進めることができた。このことは、アルツハイマー病の進行を抑制する薬剤を開発する上で重要だ」と話している。

米国では65歳以上の男女の10人中1人がアルツハイマー病患者だとする推定もある。アルツハイマー病の治療薬として米食品医薬品局(FDA)に承認されている薬剤は数種類しかなく、これらの薬剤の効果も限定的なのが現状である。(HealthDay News 2018年7月5日)

https://consumer.healthday.com/cognitive-health-information-26/alzheimer-s-news-20/could-aspirin-help-keep-alzheimer-s-away-735510.html

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1HDN7月12日「パッケージニュース」No.3

座りすぎで死亡リスクが上昇する14の疾患

普段の生活の中で、座って過ごす時間が1日当たり6時間以上の人では、3時間未満の人と比べて早期死亡リスクが19%高いことを示した研究結果が「American Journal of Epidemiology」6月26日オンライン版に発表された。米国がん協会(ACS)のAlpa Patel氏らが実施した今回の研究では、このような死亡リスクの上昇をもたらす14の疾患も明らかになった。

近年、座って過ごす時間が長いと死亡リスクが高まるとする報告が相次いでいる。しかし、死因別では、がんや心血管疾患以外の死因を幅広く検討した研究はほとんど行われていなかった。そこで、Patel氏らは今回、がん予防研究-Ⅱ(Cancer Prevention Study-II)栄養コホートのデータを用いて、余暇を座って過ごす時間の長さと全死亡リスク、さらにさまざまな死因別の死亡リスクとの関連について検討した。

対象は、同コホートの参加者のうち研究登録時に主要な慢性疾患がなかった男女12万7,554人。このうち4万8,784人が21年間(中央値20.3年)の追跡期間中に死亡した。

年齢や性、学歴、喫煙の有無、食生活、運動習慣などを考慮して解析した結果、余暇を座って過ごす時間が1日に6時間以上の人では、3時間未満の人と比べて全死亡リスクが19%高いことが分かった。また、死因別では、がん、心疾患、脳卒中、糖尿病、腎疾患、自殺、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺疾患、肝疾患、消化性潰瘍などの消化器疾患、パーキンソン病、アルツハイマー病、神経障害、筋骨格系障害の14の死因による死亡リスクが上昇することが明らかになった。さらに、死亡リスクの上昇の程度は死因によってばらつきがみられ、がんでは約10%の上昇だったが、筋骨格系障害では約60%の上昇が認められた。

以上の結果を踏まえ、Patel氏は「この研究結果のメッセージは“もっと動くべき”といういたってシンプルなものだ。座位時間は短いほど身体に良い。1時間座って過ごしたら2分間立つだけでも脂質や血糖、血圧の値は改善する」と話している。

Patel氏によれば、座位時間が長いと健康に悪影響を与える原因は明らかではないが、ソファで長時間過ごす人は間食が多いといった他の不健康な習慣がある可能性が考えられるという。また、以前の研究では座位時間が長いと中性脂肪や血糖、血圧、インスリンの値が上昇することが示されており、「これらによって座っている時間の長さと心疾患や肝疾患、腎疾患、がん、糖尿病、COPDなどによる死亡との関連を説明できるかもしれない」と同氏は付け加えている。ただ、自殺やパーキンソン病、アルツハイマー病、神経障害、筋骨格系障害による死亡リスクが上昇した理由は明確には分からないとしている。

今回の報告を受け、専門家の一人で米イェール・グリフィン予防研究センターのDavid Katz氏は「この研究から、長時間座り続けることによる早期死亡リスクの上昇には、心疾患から自殺までさまざまな要因が関与している可能性が示された。これらの関連はさらに研究を進める必要があるが、その対処法は明確で、今すぐにでも取り組める簡単なことだ。つまり、1日に何度も立ち上がって歩き回ることだ」とコメントしている。(HealthDay News 2018年7月2日)

https://consumer.healthday.com/fitness-information-14/misc-health-news-265/sitting-tied-to-raised-risk-of-death-from-14-diseases-735058.html

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1HDN7月9日「パッケージニュース」No.1

男性の片頭痛にも女性ホルモンが関与か

女性の片頭痛の多くは女性ホルモンの変動が関係していることが知られているが、男性の片頭痛にもこのホルモンが関与している可能性があることが、新たな研究で示された。約40人の男性を対象とした研究で、片頭痛のある男性は、片頭痛のない男性に比べて女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が多いことが分かった。詳細は「Neurology」6月27日オンライン版に掲載された。

米国片頭痛研究財団(MRF)によると、米国では3900万人が片頭痛を抱えており、患者数は世界で10億人にも上ると推計されている。また、片頭痛患者の約4分の3は女性が占め、その発作の半数は月経が引き金となって起こるが、これらの関連はエストロゲンなどの女性ホルモンの変動で説明がつくと考えられている。

今回の研究を率いたライデン大学医療センター(オランダ)のRon van Oosterhout氏によると、エストロゲンは片頭痛の前兆とされる“皮質拡延性脱分極(cortical spreading depolarization)”に対する脳の感受性を高めることが明らかになっている。皮質拡延性脱分極とは、大脳皮質の興奮の高まりが波のように広がっていく現象を指し、この後には大脳皮質の電気活動が抑制される状態が続き、片頭痛が引き起こされるという。

これまで男性の片頭痛へのホルモンの関与はあまり注目されていなかった。今回の研究では、月に平均3回の片頭痛発作がある男性の片頭痛患者17人と片頭痛の既往がない男性22人を対象に、男性ホルモン(遊離テストステロン)に加えて女性ホルモン(17β-エストラジオール)の血中濃度を測定して比較検討した。

その結果、片頭痛の既往がない人に比べて、片頭痛患者では発作時の血中17β-エストラジオール濃度が高いことが分かった。一方で、遊離テストステロンの値には両群間で差はみられず、片頭痛患者ではテストステロン/エストロゲン比が低いことも明らかになった。

また、男性のエストロゲン分泌量は太り過ぎや加齢といった特定の因子で増えることがあるが、今回の研究では両群間で年齢やBMIを一致させたほか、ホルモンに影響する薬剤を使用している人もみられなかった。さらに、一部の男性では、片頭痛発作が起こる前にテストステロンの血中濃度が上昇することも確認された。van Oosterhout氏は「こうした男性では、あくびが頻発したり、疲労感や食欲の増進といった片頭痛の前兆がみられ、こうしたストレスによってテストステロン値が上昇した可能性がある」と説明している。

van Oosterhout氏は、男性の片頭痛におけるホルモンの役割については、さらに研究を重ねる必要があることや、男性の片頭痛にテストステロンの補充を治療として用いることは時期尚早であることを強調している。専門家らは、片頭痛の治療法は今のところないが、予防薬を服用するほかにも、水分不足や不規則な食事、寝過ぎや寝不足、飲酒など片頭痛の誘因となる行動をなるべく避けるようアドバイスしている。(HealthDay News 2018年6月27日)

https://consumer.healthday.com/women-s-health-information-34/estrogen-news-238/could-estrogen-play-a-role-in-men-s-migraines-735241.html

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1HDN7月2日「パッケージニュース」No.3

アルツハイマー病にヘルペスウイルスが関与か

アルツハイマー病の発症に2種類のヒトヘルペスウイルス(HHV)が関与している可能性を示した研究結果が「Neuron」6月21日オンライン版に発表された。研究を実施した米マウントサイナイ・アイカーン医科大学のJoel Dudley氏らによると、アルツハイマー病患者の脳では、そうでない人の脳と比べてヒトヘルペスウイルス6A(HHV-6A)とヒトヘルペスウイルス7(HHV-7)が約2倍に増加していることが分かったという。また、これらのウイルスは、アルツハイマー病のリスクを高める遺伝子と相互に作用することも示された。

HHV-6(HHV-6AとHHV-6B)やHHV-7は、ほとんどの人が主に乳幼児期に感染する身近なウイルスで、特にHHV-6は乳児期の突発性発疹の原因となることが知られている。また、これらのウイルスは単純ヘルペスウイルスや水痘・帯状疱疹ウイルス、エプスタイン・バー(EB)ウイルスなど他のヘルペスウイルスと同様に、感染後には体内で休眠状態となり、その後、ある時点で再活性化する可能性がある。

同氏によれば、これらのウイルスは特に神経毒性が強く、アルツハイマー病以外のさまざまな神経疾患との関連が認められているが、誰もが曝されるこれらのウイルスの働きは十分に解明されていなかったという。

Dudley氏らは今回の研究で、まず、アルツハイマー病患者とアルツハイマー病ではない対照群から死亡後に採取した600以上の脳組織を用いて遺伝子解析を実施し、データを比較した。その結果、HHV-6AとHHV-7の遺伝子はアルツハイマー病のリスクを高める遺伝子の活性化あるいは抑制に働き、複雑に相互に影響し合っている可能性があることを突き止めた。

さらに、同氏らは米メイヨー・クリニックとラッシュ・アルツハイマー病センターで採取した約800の脳組織を用いて遺伝子解析を実施した。その結果、アルツハイマー病患者の脳ではHHV-6AとHHV-7が増加していることが明らかになり、最初の結果を再現できたとしている。

Dudley氏は「今回の結果は、アルツハイマー病の原因解明につながる可能性があるほか、免疫系を標的とした新たな治療法の開発に向けた足掛かりとなるだろう」と期待を示している。

専門家の一人で米アルツハイマー病協会のKeith Fargo氏も「アルツハイマー病に細菌やウイルスが関与する可能性はこれまでにも指摘されてきたが、今回の研究でその説の信頼性は高まった」と指摘。「もしアルツハイマー病の発症にウイルスなどが関与しているのであれば、抗ウイルス療法や免疫療法を新たに開発できるかもしれない」と話しているが、これらの関連についてはさらなる研究が必要だと付け加えている。(HealthDay News 2018年6月21日)

https://consumer.healthday.com/cognitive-health-information-26/alzheimer-s-news-20/could-herpes-virus-play-a-role-in-alzheimer-s-735077.html

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1HDN6月28日「パッケージニュース」No.3

結婚で心臓病や脳卒中のリスク減

結婚は健康に良い影響を与えることがさまざまな研究で明らかにされているが、心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患を予防する効果を示唆する研究結果が「Heart」6月19日オンライン版に発表された。欧米やアジア、中東などさまざまな国や地域の男女を対象とした34件の研究をメタ解析した結果、結婚している人と比べて結婚歴がない人や離婚または死別により独身となった人では心血管疾患を発症するリスクが約1.4倍で、心筋梗塞や脳卒中による死亡リスクも約1.4~1.5倍であることが分かったという。

この研究は、英キール大学プライマリケア・健康科学研究所のMamas Mamas氏らが実施したもの。同氏らは今回、1963~2015年に発表された婚姻状況と心血管疾患リスクとの関連を評価した34件の研究を抽出し、これらの研究に参加したアジアや欧州、中東、北米、スカンジナビアにおける42~77歳の男女計200万人超のデータを用いてメタ解析を実施した。

その結果、結婚している人と比べ、結婚歴がない人や離婚または死別により独身となった人では心血管疾患リスクは42%、冠動脈疾患リスクは16%高く、冠動脈疾患による死亡リスクは43%、脳卒中による死亡リスクは55%高いことが明らかになった。また、男女ともに離婚した人は冠動脈疾患リスクが35%高く、配偶者と死別した人は脳卒中リスクが16%高いことも分かった。

さらに、脳卒中後に死亡するリスクに結婚している人と独身の人で差はみられなかったが、心筋梗塞後に死亡するリスクは、結婚している人に比べて独身の人で42%高かった。

この研究結果について、Mamas氏らは「婚姻状況が心臓病や脳卒中、これらの疾患による死亡の独立したリスク因子である可能性が示された」と話している。ただし、この研究は因果関係を証明したものではなく、今後は婚姻状況が不健康な生活習慣や心血管リスク因子の代替マーカーとなるのか、婚姻状況そのものがリスク因子であるのかを検討する必要があると付け加えている。

なお、結婚が健康に有益である理由にはさまざまな説がある。例えば、健康面で問題が生じた場合、配偶者がいると早期発見や早期治療につながりやすい。また、結婚している人は積極的に治療を受け、服薬アドヒアランス(遵守)に優れるほか、経済的に安定し、心身が健康で幸福な状態(ウェルビーイング)にある可能性が高く、交友関係が広い人が多いと考えられ、これらが結果的に健康に好ましい効果をもたらしている可能性があるという。(HealthDay News 2018年6月19日)

https://consumer.healthday.com/public-health-information-30/marriage-health-news-462/marriage-is-good-medicine-for-the-heart-734913.html

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2HDN糖尿病ニュース6月21日配信2

糖尿病患者でパーキンソン病リスク上昇

2型糖尿病と診断された患者は、2型糖尿病のない患者と比べてその後にパーキンソン病を発症するリスクが高い可能性のあることが、英国の国民保健サービス(NHS)の大規模データを用いた研究で分かった。ただし、研究を率いた英ロンドン大学神経学研究所教授のThomas Warner氏は、2型糖尿病患者全体のうちパーキンソン病を発症する患者はわずかに過ぎず、結果には慎重な解釈が必要だとしている。詳細は「Neurology」6月13日オンライン版に掲載された。

Warner氏らは、1999~2011年のNHSの公的医療機関における全入院記録を収載したHospital Episode Statistics(HES)のデータを用いて、2型糖尿病の診断とその後のパーキンソン病の発症リスクとの関連を調べた。対象は、追跡期間中に新たに2型糖尿病と診断された患者201万7,115人と捻挫や静脈瘤、虫垂切除術、股関節置換術といった糖尿病と関連しない理由で入院した患者617万3,208人(対照群)とした。

その結果、2型糖尿病と診断された患者は、2型糖尿病のない患者と比べてその後にパーキンソン病を発症するリスクが1.32倍であることが分かった。また、網膜症や腎症、神経障害といった糖尿病合併症のある患者ではそのリスクは1.49倍になり、25~44歳の若年患者ではさらに上昇して3.81倍に上ることも明らかになった。なお、今回の解析では糖尿病の薬物療法の内容や喫煙歴は考慮されなかった。

Warner氏は、この研究は因果関係を証明するものではないとしつつ、これらの疾患を関連づける2つの理由として、遺伝的な要因や発症過程に共通点がある可能性を挙げている。後者については、糖尿病に特徴的なインスリン分泌や血糖コントロールの障害が考えられ、「脳細胞はエネルギー源としてブドウ糖(グルコース)にほぼ完全に依存している。インスリン分泌が障害されると全身の細胞がブドウ糖を使えなくなるが、このことは一部の脳細胞に特に強い影響を与えている可能性がある」と同氏は説明している。

全米パーキンソン病財団のMichael Okun氏は「これまで多くの研究でパーキンソン病と糖尿病の関連が報告されており、今回の結果は驚くべきものではない」とした上で、若い患者では遺伝的な要因が重要な役割を果たし、高齢患者では老化自体が脳内の内分泌系に障害をもたらしている可能性を指摘している。また、一部の糖尿病治療薬がパーキンソン病の予防や治療に有望とする報告もなされているが、同氏は「十分に検証されるまでは安易に使用すべきではない」と強調している。(HealthDay News 2018年6月13日)

https://consumer.healthday.com/diabetes-information-10/misc-diabetes-news-181/diabetes-linked-to-risk-for-parkinson-s-disease-734726.html

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2HDN糖尿病ニュース6月21日配信1

海馬の石灰化に「糖尿病」と「喫煙」が関連か

喫煙習慣がある人や糖尿病患者では、記憶の形成や学習に重要な役割を担う脳の海馬が石灰化するリスクが高まる可能性のあることが、ユトレヒト大学医療センター(オランダ)の研究チームの検討で分かった。一方で、海馬の石灰化の有無やその程度は認知機能とは関連しない可能性も示された。研究の詳細は「Radiology」6月12日オンライン版に掲載された。

この研究は、2009~2015年に、オランダの一般病院のメモリークリニック(物忘れ外来)を受診した1,991人(45~96歳、平均年齢は78歳)を後ろ向きに追跡したもの。頭部CT検査で脳の海馬の石灰化を評価し、認知機能検査や心血管リスク因子(高血圧と糖尿病、脂質異常症、喫煙習慣)の評価も行って海馬の石灰化に関連する因子と石灰化が認知機能と関連するかどうかを検討した。

解析の結果、対象患者の19.1%(380人)で海馬の石灰化が認められた。また、海馬の石灰化には、糖尿病と喫煙習慣、加齢の3つの因子が有意に関連することが分かった(1年ごとのオッズ比はそれぞれ1.50、1.49、1.05)。一方で、この石灰化の有無や程度と認知機能との間には関連はみられなかったという。

研究を主導した同大学老年医学のEsther J.M. de Brouwer氏は「認知症の中でも最も多いアルツハイマー型認知症では、脳の海馬が萎縮していくことが知られている。しかし、驚くべきことに、今回の研究では海馬の石灰化は認知機能と関連しないとする結果が得られた」と話す。この理由として同氏は、海馬にはいくつもの層があり、石灰化しても記憶の貯蔵に重要な部位には影響しない可能性があることや、今回は対象者が全て物忘れ外来を受診した患者であったことを挙げている。

今回の結果からは、糖尿病や喫煙習慣で海馬が石灰化するとは結論づけられないが、de Brouwer氏は「これらの間には強い関連があることが示唆される」と指摘する。同氏は、最近の組織学的な研究では、海馬の石灰化は脳心血管疾患の徴候の一つである可能性が示されているとし、「喫煙や糖尿病はこれらの疾患のリスク因子であることから、喫煙や糖尿病が海馬の石灰化のリスク因子であっても不思議ではない」と話している。(HealthDay News 2018年6月12日)

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1HDN6月7日「パッケージニュース」No. 1

脳震盪後のフォローアップケアは不十分

米国では、年間数百万人が軽度の外傷性脳損傷(TBI)である脳震盪を起こしているにもかかわらず、患者の多くは適切なフォローアップ治療を受けていないことが、新たな研究で明らかにされた。研究の結果は「JAMA Network Open」5月25日オンライン版に掲載された。

米疾病対策センター(CDC)によれば、米国では推定320万~530万人がTBIによる長期障害を抱えて生活している。また、TBIは2013年の米国での救急受診のうち280万件を占め、直接的、間接的費用は760億ドルを超えるという。しかし、軽度TBI患者における退院後のフォローアップ治療について調べた研究は少なく、フォローアップ治療が適切に行われているかどうかは不明だった。

今回、論文の筆頭著者である米南カリフォルニア大学Schaeffer健康政策・経済センターのSeth Seabury氏らは、米国のTransforming Research and Clinical Knowledge in Traumatic Brain Injury(TRACK-TBI)研究のデータを用いて、2014年2月~2016年8月に登録された軽度TBI患者が退院後どのようなフォローアップケアを受けたかを調査した。

TRACK-TBI研究は、米国内にある11の高度外傷センター救急部門に搬送された17歳以上のTBI患者を対象とした前向き長期観察研究である。対象となった患者は831人(平均年齢40.3歳、女性58%)で、退院時にTBIに関する患者教育用資料を受け取った患者は42%(353人)、受傷後3カ月に医師などの診察を受けていた患者は44%(367人)であった。

CTスキャンで脳損傷が認められた236人の患者のうち39%(92人)は受傷後3カ月でも医師などの診察を受けていなかった。さらに、3つ以上の中等度~重度の脳震盪後症状があった患者279人のうち、受傷後3カ月以内に診察を受けていたのは52%(145人)に過ぎなかった。

この結果についてSeabury氏は、「脳震盪を起こした患者には長期にわたり後遺症や衰弱がみられることがあるが、著しい脳震盪後症状があった患者でも診察を受けていないことが多かった。それらの症状が脳損傷に関連する可能性があるという認識が患者や医療従事者に不足していることを反映したものだ」と述べている。

脳震盪は軽度に分類されることが多いが、この「軽度」という用語には語弊があると、Seabury氏は指摘する。脳震盪後には片頭痛、思考力の低下、視力低下、記憶障害、精神的苦痛、人格障害などがみられることがある。脳震盪が軽いけがであるかのように扱われる患者があまりに多いと、研究論文の共著者であるGeoffrey Manley氏も述べ、「もし糖尿病や心疾患で救急受診した患者に対して医師が経過観察を怠れば、医療過誤として糾弾されるはずだ」と指摘している。

「今回の研究から、フォローアップ治療が必要な患者を適切に特定するためのツールを医師や患者に提供する必要がある」と、Seabury氏は結論付けている。(HealthDay News 2018年5月25日)

https://consumer.healthday.com/cognitive-health-information-26/traumatic-brain-injury-1002/little-follow-up-for-many-concussion-patients-734198.html

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1HDN6月4日「パッケージニュース」No. 4

治療も可能? 新たなタイプのめまいを特定

ソウル大学校(韓国)のJi-Soo Kim氏らは、新たな研究で「頭振り検査(head shaking test)」の後に無意識のうちに眼球が動く「眼振」が認められる特定のタイプのめまいがあることを突き止めた。めまいの原因は多様であるため治療は困難だと考えられてきたが、このタイプのめまいであれば薬物療法で治療できる可能性があるという。この研究結果の詳細は「Neurology」5月23日オンライン版に掲載された。

めまいは内耳の障害や腫瘍などさまざまな健康問題がきっかけで生じることが分かっているが、原因が不明な場合もある。また、めまいの患者では嘔吐や頭痛、乗り物酔いなど他の不快な症状がみられることもある。

Kim氏らは、めまい専門施設を受診した原因不明の反復性自発性めまい(recurrent spontaneous vertigo;RSV)患者338人のうち、頭振り検査で眼振(headshaking nystagmus;HSN)が認められた患者35人(10%)を特定。これらのRSV-HSN患者と、メニエール病や前庭性片頭痛、前庭神経炎といった疾患が原因でめまいがみられる患者35人の特徴について比較検討した。

なお、頭振り検査は患者に暗い部屋の中で椅子に腰かけてもらい、検査担当者が患者の頭を前方に動かした上で約15秒間にわたって水平方向に左右に振るというもの。その後の眼球の動きをビデオで撮影し、観察した。その際、Kim氏らは一部の患者で眼振が他の人よりも長く続いていることに気付いたという。

また、研究では全ての対象者にルーチンで実施している神経学的検査に加え、聴覚・前庭機能の包括的な評価を実施し、めまいの家族歴についても尋ねた。さらに、質問票を用いて乗り物酔いの感受性を評価したほか、必要に応じてMRIなどによる脳画像検査を実施した。

その結果、RSV-HSN患者では検査後の眼振の持続時間が12秒に及び、メニエール病患者の2倍の長さで、前庭性片頭痛や前庭神経炎の患者と比べて5秒長かった。また、RSV-HSN患者ではメニエール病や前庭性片頭痛などの患者と比べて乗り物に酔いやすいことも明らかになった。さらに、RSV-HSN患者35人中20人に予防的に薬剤を投与した結果、約3分の1の患者で症状が軽減または完全に消失したとしている。

なお、Kim氏らはこれらのRSV-HSN患者31人を平均で12年間追跡したが、その間にめまいが完全に消失した患者は5人、症状が改善した患者は14人で、症状が悪化した患者はたった1人だったという。その他の結果については明らかにされていない。

Kim氏によると、RSV-HSN患者では、身体の動きや環境への脳の反応を促す前庭系の働きが過剰になっている可能性があるという。同氏は「この不安定な働きが、身体や環境の要因によって障害されると、めまいが発生するのではないか」との見方を示している。

また、今回の研究結果を踏まえ、Kim氏は「めまいは診断が難しく、患者をかなり衰弱させる。今回、治療に反応する可能性があるめまいの診断法を見出せたことに心を躍らせている」と話している。(HealthDay News 2018年5月24日)

https://consumer.healthday.com/diseases-and-conditions-information-37/dizziness-and-vertigo-news-205/newly-identified-form-of-vertigo-responds-to-treatment-734083.html

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1HDN「パッケージニュース」No. 1

質の高い食事が脳を大きくする?

脳機能を明敏に保つためには食事内容を見直すのが良いようだ。オランダの研究で、野菜、果物、ナッツ類、魚が豊富な食事を取っていた人は、栄養が不十分な食事を取っていた人に比べて脳のサイズが大きいことが明らかにされた。研究の責任著者で、エラスムス大学メディカルセンター(オランダ)教授のMeike Vernooij氏は、「健康的な食事を続けることは、高齢者が思考力や記憶力といった認知機能を維持し、増強するために有用な可能性がある」と述べている。この研究結果は「Neurology」5月16日オンライン版に掲載された。

今回の研究(The Rotterdam Study)では、研究開始時点で45歳以上であった4,213人(平均年齢66歳)を対象とした。参加者には約400種類の食品が記載された質問票を用いて、最近1カ月に食べた食品の種類と量を記入してもらい、オランダ健康審議会による食事ガイドラインに基づいた0~14のスコア(14が最も健康的)で食事の質を評価した。平均スコアは7であった。さらに、脳MRI検査を行い、参加者の脳容積を測定した。

その結果、高血圧、身体活動、喫煙など、脳容積に影響を及ぼす他の因子を考慮して調整した解析でも、食事の質が高いほど脳容積が大きいことが分かった。最も健康的な食事を取っていた人は、最も不健康な食事を取っていた人に比べて脳の容積が約2mL大きかった。Vernooij氏によると、加齢とともに認知機能が低下するリスクが高まることが知られており、全脳容積は1歳年を取るごとに3.66mL減少することが分かっているという。つまり、2mLという脳容積の差は約6カ月分の老化に相当すると、同氏は説明している。

ただし、今回の研究では因果関係は明らかにされていない。質の高い食事が脳に良い理由としては、今回の調査で健康的な食事をしていた人たちは、脳が発達する若い時期から十分な栄養を摂取していた可能性が考えられるという。

米アルツハイマー病協会(AA)理事のJames Hendrix氏は、健康的な食事により全身の血流も良くなると指摘している。「心臓に良いものは脳にも良い。心臓がよく動いていて脳に十分な血液を送ることができていれば、脳の機能もより向上する。また、アルツハイマー病の原因とされるアミロイドβやタウ蛋白を除去するためには、脳の血流が良好でなければならない」とも述べている。(HealthDay News 2018年5月16日)

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